藤子不二雄Aさん追悼 『まんが道』のグルメシーンで振り返る両先生の“青春の日々”【ムーディ勝山・コラム】の画像
画像は藤子不二雄Aデジタルセレクション『まんが道』第1巻より(小学館)
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 どうもムーディ勝山です。4月7日、『忍者ハットリくん』『魔太郎がくる!!』『怪物くん』など数々の名作を生み出した藤子不二雄A先生がお亡くなりになりました。これまで私はいろいろな漫画から人生を教わってきましたが、その中でも一番と言っても良いほど好きな作品が、藤子不二雄A先生の『まんが道』なんです。

 藤子不二雄の両先生をモデルとした満賀道雄と才野茂。二人の出会いから、漫画に心血を注ぎ上京してプロの漫画家になるまでの姿を実話と脚色を織り交ぜて描いた自叙伝的作品(続編の『愛…しりそめし頃に…』も最高です)。内容も感動的ながら、この漫画にはもう一つの楽しみ方があり、A先生が描かれる食事シーンがなんとも魅力的だったことでしょう。現代にもグルメ漫画は数あれど、『まんが道』の食事シーンは格別で、満賀と才野が美味しそうに食べる飯を見ては、藤子不二雄両先生の若かりし日の姿を想像していました。貧しかった時代から、売れっ子漫画家として大忙しになるまで、お二人の青春時代の数々が食事シーンに描かれていたんです。

 そこで今回は私ムーディ勝山が、誠に勝手ながら『まんが道』から好きな食事シーンを10個を選び、ランキング形式でお送りしたいと思います!

■甘いものが本当に貴重だった子ども時代

 まず「まんが道の食事シーンベスト10」第10位は!

「肝油」です!

『まんが道』で一番最初に出てきた食べ物、それが肝油です。1巻は終戦直前の昭和20年7月から始まります。戦争が終わった後の9月に満賀は才野のいる小学校に転校しましたが、その学校で毎日一粒、学童の栄養補給のために配給されていたのが肝油です。糖衣でくるんだもので、甘さに飢えていた学童たちに大変な人気だったそうです。これを一粒食べた満賀は「アンマ~イ!」と、のちの「ンマーイ」の原型のような感想を言っています。あまりの貴重さに、そこではお金以上の価値があり、肝油を食べる者は満賀以外1人もいず、いざと言うときのために肝油を瓶などに入れて貯めているのも印象的でした。

 続いて第9位は!

「テラさんのフランスパンのメンチカツはさみ」

 上京した満賀と才野が手塚先生へのあいさつにトキワ荘に行った際、留守で手塚先生に会えなかった二人をテラさんが自室に招き、朝食を食べていなかった二人にご馳走したのがこの「フランスパンのメンチカツはさみ」でした。そこでテラさんと漫画に対する情熱について熱心に話し合い、これから作業をするという二人に自分の部屋まで貸してくれるという、テラさんの頼もしさがよく出ているシーンでした。ちなみにここでははっきりと「ンマーイ!」と言っております。

 続いて第8位!

「母が持ち帰ってくれたお店の売れ残りのシュークリーム」

 第7位!

「トキワ荘での初自炊」

 第6位!

「新聞社の後輩竹葉さんとのデートで食べた高岡一うまいカレーライス」

 です! いきなり駆け足で3つ紹介させていただきました。このままのペースだと文章のボリューム半端ないぞ? と気づいての駆け足でございます。このあたりのシーンは本当にどれも美味しそうなので、未読の方はぜひ手に取って読んでみてください。

 8位は、母が持って帰ってきてくれたシュークリームとアメリカの雑誌「コリアーズ」を読みながら、これぞ恍惚の表情! という顔で満賀が食べてるのがめちゃくちゃ美味しそうなんです。

 7位の初自炊は、二人で味噌や鍋を隣人の女性に貸してもらったりしながらも美味しく作れた、ご飯と味噌汁と、表記はないですがおそらくコロッケです。それと隣人の女性の差し入れの漬物。翌朝に残ったご飯と味噌汁を混ぜて満賀が作ったおじやも実にうまそうでした。

 6位はたびたび出てくる、満賀の恋の話です。A先生は恋の描き方も良いんですよね。パターンとしては翌日には必ず満賀がその女性の夢を見ます(笑)

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