■「神作画」と話題となった墜姫の無数の帯

 続いては第6話「重なる記憶」での、堕姫と炭治郎が戦うシーン。堕姫の蚯蚓帯(みみずおび)による攻撃には炭治郎も大苦戦。堕姫役を務めた沢城みゆきの演技と作画のすごさが話題となったエピソードだが、あらためて上弦の鬼の強さを思い知らされる場面でもあった。

 イベントでの花江の証言によると、アフレコ時にはこの帯の色がそれぞれ異なるように塗り分けられていたという。一つ一つの帯の動きを分かりやすくするためとのことだが、花江はこの完成前の映像を見て「描くのが大変なんだな」としみじみと感じたようだ。

 また、上弦の鬼とのバトルシーンはものすごいスピード感で繰り広げられていたが、そのどれもが原作の構図やポージングを全く同じように再現されている。これまでの『鬼滅の刃』でも、原作の複雑な太刀筋をアニメが補完していたが6話の戦いはコマ送りでもう一度見直してみたくなるほどの細かさ。コマ送りをすることで、どのシーンも作画の崩れがないこともアニメ『鬼滅の刃』のすごさだと気づくだろう。

■セリフはなく、動きで見せた兄弟愛

 最後は第11話「何度生まれ変わっても」から、イベントで花江もお気に入りだと語った、妓夫太郎と堕姫がともに地獄に落ちていく場面の演出。

 2人の死後、妓夫太郎に置いていかれそうになった堕姫が泣きながら「何回生まれ変わってもあたしはお兄ちゃんの妹になる」「ずっと一緒にいるんだもん」と駄々をこねた場面。堕姫が妓夫太郎の背中に無理やり乗っかかると、ここで妓夫太郎は、何も言わずに堕姫をおんぶし直すのだった。

 自分と一緒に地獄に落ちようとする堕姫の気持ちを受け入れた妓夫太郎の覚悟、そして2人の兄弟愛を、セリフではなく動きだけで見せたこのシーン。漫画ではどうしても動きが静止画のようになってしまうが、この言葉はなくとも「魅せる」シーンは、アニメならではの名シーンだと言える。イベントで花江は「妓夫太郎は無言で堕姫を背負い直すんですよ。そこがすごくグッときちゃって。泣きましたね」と感想を語っていたが、同じように2人の姿に涙した人は多いのではないだろうか。

 このほかにも、細かなこだわりを感じる名シーンを挙げればキリがないアニメ『鬼滅の刃』。「刀鍛冶の里編」のアニメ放送が待たれるが、その前にもう一度「遊郭編」をじっくり見直してみるのもオススメだ。

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