■茶漬けは箸の先だけ濡らす

 コミックス6巻に収録された「究極の作法」というエピソードで、士郎たちは「日本料理の美意識」について取材したいという海外雑誌の記者に協力することに。

 杉箸を製造している吉野の工房での取材後、出来たばかりのお箸で食事をすることになった士郎たちだったが、なんとその食事会の席で海原雄山と鉢合わせてしまう。緊迫した空気が漂いながらも、京料理を堪能した一同だったが、〆に登場した鯛の茶漬けを食べ始めるやいなや、雄山の目が鋭く光る。

 そして雄山から、自分が食べていた箸と食通の登田氏の“箸の違い”について指摘された士郎は、「ああっ!! 俺の箸の先は四センチ以上ぬれているのに、登田さんの箸は一センチくらいしかぬれていない」と気づいてがく然。

 雄山曰く「どんなに美しい食器と箸で食べても、食べ方が美しくなかったら何もかもぶち壊しだ」とのことだが、箸を一センチしか濡らさずに汁物を食べるのは、なかなかハードルが高い。だが食事マナーのひとつとして、ちょっと挑戦してみたくなるエピソードだ。

■みそ汁の具は1種類

 コミックス48巻に収録された「家庭の味」というエピソードでのこと。「究極のメニュー」作りでさまざまな困難をともに乗り越えてきた士郎と栗田さんは、その後めでたく結婚し、夫婦となる。それまで実家暮らしだった栗田さんは、料理の腕を鍛えたいと進んで朝ごはんを作るが、ここで事件が勃発する。

 栗田さんの作ったみそ汁を見た士郎は、「俺はみそ汁の実は1種類だけのほうが好きだ」「実をいくつも入れると味がにごる」と冷たく言い放つ。その後も栗田さんの用意した漬け物の切り方、干物の調理方法など、すべてに小言を言っていく士郎。家事を経験したことのある方なら士郎の容赦ないダメ出しを見て、怒りで思わずページをめくる手に力が入ったことだろう。

 けれど、たしかに具が少ない分には楽ではあるし、本当にみそ汁が澄んだ味わいになるのなら試してみても良いかも……と思わされたエピソードだった。


 111巻にも及ぶ『美味しんぼ』には、贅を尽くした高級料理、絶品料理がたくさん登場するが、中には一般家庭でも真似できそうなレシピや作法などの情報も盛りこまれている。現在『美味しんぼ』の公式YouTubeチャンネルでは、アニメ版全121話の再配信が行われているので、そちらをチェックしてみるのもありかも!

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