■おっこ役・小林星蘭の演技に泣かされる『若おかみ』

 続いて紹介するのは、大人が涙腺崩壊すると話題の映画『若おかみは小学生!』。交通事故で両親を亡くし温泉旅館を営む祖母に引き取られた少女が「若おかみ」の修業に奮闘する様子を描いた令丈ヒロ子氏による児童文学シリーズが原作だ。

 この設定だけでも、小学生の女の子の境遇にしてはなかなかハードな世界観のように思われるだろう。2018年に公開された映画は一作完結の独立したアニメ映画として製作されており、主人公の“おっこ(CV:小林星蘭)”が旅館で幽霊たちと交流したり、旅館にやって来たさまざまな客におもてなしをする様子が描かれた。

 しかし、物語の後半では、両親が亡くなった事故の直接の加害者であるトラック運転手が知らずに客として旅館を訪れ、“おっこ”はショックを受けてしまう。さらに“おっこ”はこれまで彼女を夢の中で慰めてきた両親の幻や友人の幽霊たちの姿も見えなくなってしまう。これには見ているこちらも心が痛むが、最終的に“おっこ”は、おかみの仕事にプライドを持ち、現実を受け入れるのだ。

 そのけなげな姿に、映画を見た人なら、自分がもし“おっこ”と同じ立場なら同じように振る舞えるかと、つい自らに問うてしまうだろう。トラウマや死などを取り扱った重いストーリーだが、必ずや「見てよかった」と思える名作だ。

 絵のタッチや第一印象にだまされるなかれ。これらの作品には、大人の私たちにも学ぶところがたくさんあるはずだ。

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