■兄弟同士で殺し合いをさせられた忍の訓練

 忍の家系にうまれた宇髄は、兄弟とともに父親に激しい訓練を強いられてきた。3人は過酷な修行の中で亡くなり、最終的に残った6人の兄弟同士で覆面をさせられた状態で殺し合いをさせられるというむごい経験をした。

 宇髄自身も気づかず2人の兄弟を殺し、唯一生き残った弟を止められなかったことから3人の妻とともに里を抜けている。自信満々に見える今の宇髄からは考えられないが、「自分は地獄に落ちる」というのがしばらく彼の口癖になってしまっていたようだ。

 そんな宇髄がお館様に出会い、「命は賭けて当然」「矛盾や葛藤を抱える者は愚かな弱者」という価値観をようやく否定することができた。彼が派手であることを好むのは、忍として地味に生きてきた反動と、弱く人間らしい自分自身を受け入れられたためだろう。

 そう考えると、宇髄の見た目に反して繊細な性格と冷静な判断力は複雑な過程を経て形成されたものだと分かる。鬼とは直接関係ない宇髄が鬼殺隊入りしたのは、忍として奪ってきた多くの命への罪滅ぼしとしてでもあるのだろう。柱を引退した後も皆のために鬼殺隊の一員として多くの後輩を育てる彼の背中は、なんと人間らしくたくましいことだろうか。

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