■鬼になったことで変えられた運命

 一方で、結果的に鬼になることで命を救われた者もいる。

 上弦の伍である玉壺は人間時代から変人だった。子どもを惨殺し壺に詰めるという猟奇殺人に手を染めていたところその親から敵討ちにあい、もりでめった刺しにされ死にかけていたところに無惨が偶然通りがかり鬼になったという。自業自得ともいえそうだが、彼の残虐ぶりは、鬼になっても変わらなかったようだ。

 そんな彼とは打って変わって、上弦の陸の堕姫と妓夫太郎の人間時代はあまりにも悲惨。遊郭の最下層で生まれた2人は身を寄せ合って生きてきたが、ある事件がきっかけで堕姫は生きたまま焼かれ、妓夫太郎は侍に斬られて瀕死となってしまう。そこを偶然通りがかった童磨に鬼にされたのだが、少なくとも2人に鬼になる以外に生きる道はなかったように思う。やむなく鬼になったという人も、実は少なくないのかもしれない。

 そして、中には鬼となったことで、無惨も予想外の意外な活躍をした者もいる。

 最終的には上弦の肆にまで登り詰めた琵琶を扱う鬼・鳴女は、人間時代には人を殺した後に琵琶を演奏するという日々を過ごしていた。ある日殺す相手に無惨を選んだが、当然のごとく返り討ちにあってしまう。しかし無惨は彼女を気に入ったようで、彼女を鬼にしたという過去が公式ファンブックで明かされているのだ。作中では、十二鬼月でないにもかかわらずその探査能力が高く評価され無惨直々に「お前は私が思った以上に成長した 素晴らしい」と称賛の言葉をかけられている鳴女。彼女は無限城を操るという、作中屈指の厄介な能力を持つ鬼でもある。

「無限列車編」に登場した下弦の壱・魘夢も、小腹が空いた無惨にはらわたを喰われ絶命したただの人間。しかし致命傷により痛みを感じなかったようで、死の間際まで無惨を褒めそやした。そこで無惨は気まぐれにそんな魘夢を鬼にしたようだ。

 以降無惨は魘夢のことを気にもとめていなかったようだが、彼は期待もされていないのにいつの間にか下弦の壱にまで登り詰めていたのだから、たいしたものだ。

 鬼になった経緯はさまざまあれど、一度鬼になると人間時代のことは忘れてしまうらしい。彼らの背負ってしまった重い運命に、敵キャラながら悲しみを感じざるをえない。

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