■変形ロボット「レオパルドン」のデザインは村上克司

 ジーンは、東映の特撮番組がキャラクター商品を売るための宣伝として機能していることにも注目したが、スパイダーマンは基本的にメカや乗り物に乗るキャラクターではなかったため、商品として売り出すには素朴すぎた……。そこで東映『スパイダーマン』にロボットが登場することになったのだ。

 デザインを持ちかけられたのは、『超電磁ロボ コン・バトラーV』や『未来ロボ ダルタニアス』などの玩具デザイナー・メカニカルデザイナーとして知られる村上克司であった。

 村上は、スフィンクスのような形状をした宇宙船マーベラーが変形し、「レオパルドン」というロボットになるデザインを発案。東映は少し前に『大鉄人17』で変形ロボットのシステムを取り入れていたこともあって、『スパイダーマン』に関しても変形ロボのスタイルが採用された。

『大鉄人17』の場合は、『ジャイアントロボ』と同様に、ロボットが主体で人間側は操縦する立場でしかなかった。主体は等身大ヒーローで、サポートとしてロボットが登場するという東映特撮は『スパイダーマン』が初となった。

■スーパー戦隊の基礎を作ったのもスパイダーマンだった!

『キャプテン・アメリカ』のリメイクとして『キャプテン・ジャパン』が企画され、諸事情により『バトルフィーバーJ』というタイトルで1979年から1980年にかけて日本で放送された。国をモチーフとしたデザインという設定は残され、胸にキャプテン・アメリカの初期シールドを思わせるエンブレムがつけられている。

 この『バトルフィーバーJ』にも『スパイダーマン』で好評だった巨大ロボットが引き続き採用されている。

 スーパー戦隊シリーズは1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』と1977年の『ジャッカー電撃隊』の2作品で一度終了を迎えている。だが『スパイダーマン』で初めて採用された「レオパルドン」のおもちゃの売上が成功したことで、戦隊ヒーローにも変形ロボットを登場させるという案が通り、見事『バトルフィーバーJ』で番組が復活したのだ。

 同作品以降、シリーズに巨大ロボ戦が導入。本格的なスーパー戦隊シリーズとして再スタートを切った。このことから90年代ぐらいまでの媒体によっては『バトルフィーバーJ』がスーパー戦隊1作目とされており、過去のスーパー戦隊が登場する『高速戦隊ターボレンジャー』の第1話でも「初代」とされた。

 つまり東映版『スパイダーマン』は、現在の等身大ヒーローとロボットの組み合わせの基礎を作り出した作品でもあるのだ。

 ちなみにスーパー戦隊シリーズとしては、『電子戦隊デンジマン』『太陽戦隊サンバルカン』もマーベルとの提携作品として扱われていて、海外での商品展開の場合、例えば『海賊戦隊ゴーカイジャー』のレンジャーキーなどから、この3作品のキャラクターが外されていることもある。

 その他にも「ムーンナイト」や「シルバーサーファー」の東映によるリメイクも企画されていたとされていて、『宇宙刑事ギャバン』がシルバーサーファーのボツ企画が派生したという説もあるなど、マーベルコミックと日本の特撮は切っても切り離せない関係にあるのだ。

■レオパルドンがアメリカにロボットブームを巻き起こす!

 一方、マーベル側もレオパルドンのおもちゃの売上に手応えを感じ、ロボット人気に便乗するかたちで、東映の『惑星ロボ ダンガードA』や『勇者ライディーン』などのロボットヒーローを主人公としたコミック『ショーグン・ウォリアーズ』を出版。

 その成功によって、『トランスフォーマー』のコミックも前向きに出版されることになる。同作のおもちゃ自体はコミックより以前から展開されていたが、80年代に刊行されたマーベルコミック版からストーリーの基礎が固まり、そこから人気が定着。『トランスフォーマー』のヒットを受け、アメリカでのロボットヒーロー人気がさらに加熱していった。

 東映版『スパイダーマン』はアメリカでは2009年まで、公にはされてこなかったが、そこから派生していった作品からの影響を受けたものは非常に多いのだ。東映版『スパイダーマン』が黒歴史と呼ばれていた頃もあったが、この作品がなければ、今存在していない作品も多いのではないだろうか。

(C)2020 MARVEL/Spider-Man, Leopardon: Based on original 1978 Spider-Man TV Series created by TOEI Company, Ltd.

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