『機動戦士ガンダム』に学ぶ専門用語『哀戦士編』でブライト・ノアが下した「白兵戦」指示、その意外なルーツとは?の画像
画像は『GUNDAM HISTORICA(ガンダムヒストリカ)』(講談社)第7巻・書影より

 ガンダムシリーズの新作テレビアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が2022年に放送開始になることや、安彦良和監督が手がける新作映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(2022年公開予定)の製作などが発表され、令和に入ってもガンダム人気は衰えを知らない。

 1970年代後半に生まれた「リアルロボット」アニメの先駆けとも言われる『機動戦士ガンダム』には、物語のリアリティを高める設定や用語が数多く登場する。そこで今回は、『劇場版 機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』の中に登場した、ある専門用語に注目してみた。

■一般的にも知られる“軍事用語”のルーツとは?

 劇中、ガンダムとの戦闘を経て戦力を失ったジオン軍の士官ランバ・ラルは、ホワイトベースに直接乗りこむゲリラ戦法に打って出る。銃を手に艦内に侵入しようとするジオン兵を撃退するため、ブライト・ノアはクルーたちに「総員、白兵戦の用意!」と号令をかける場面があった。

 このときの「白兵戦」の意味は、『ガンダム』を見ている層ならほとんどの人が理解できたはず。言うまでもなく、敵兵士と近接戦闘を行うことを指している。実際アニメ中でも銃や手りゅう弾といった軽装備でホワイトベースに突入してきたランバ・ラル隊は、艦内でホワイトベースのクルーたちと近接戦を繰り広げていた。

 しかし、この「白兵戦」は一般的な言葉かと思いきや、れっきとした軍事用語であることをご存知だろうか。また近接戦のことをなぜ「白兵戦」と呼ぶのか、不思議に思った人もいるかもしれない。

 もともと「白兵」とは、剣やナイフといった「白刃(しらは、はくじん)」を装備して戦う兵士を指す。なるほど「真剣白刃取り」なんて言葉もあるから、日本古来の一般的な言葉がルーツなのかと思いきや、実は違う。

「白兵戦」の語源とされる「白刃」とは、明治時代に日本帝国陸軍がフランス式の用兵を採用した際、マニュアルにあった接近戦を指す「arme blanche(白い武器)」というフランス語に、日本語の「白刃」を当てたものだと言われている。そう考えると、思いのほか新しい言葉のようだ。

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