■アニメ史に残る伝説のトラウマシーン
続いてアニメファンの間で“トラウマもの”の母親の最期として語り継がれているのが『機動戦士Vガンダム』に登場した主人公ウッソ・エヴィンの母親のシーンです。
ウッソの母ミューラ・ミゲルはもともとサナリィの研究者で、リガ・ミリティアの主要人物の1人。モビルスーツ開発において重要な役割を担った人物で、V2ガンダムの開発メンバーでもありました。
彼女は幼いウッソにサバイバル技術や高等教育を叩きこんだ人物であり、彼の卓越したモビルスーツ操縦能力はそんな英才教育の賜物とも言えるでしょう。
物語開始以前に幼いウッソを残して宇宙へ行ってしまったものの、第30話「母のガンダム」の中でウッソと再会。しかし、とある事件がきっかけでザンスカール帝国に囚われてしまいます。
そして迎えたのが、第36話「母よ大地にかえれ」。タイトルからして不穏なこのエピソードの中でミューラ・ミゲルは人質としてモビルスーツに捕まったまま、盾にされてしまいます。
ウッソはなんとか敵モビルスーツを行動不能にしますが、そのとき地面のくぼみで運悪く跳ね上がったタイヤつき戦艦の巨大な車輪が、母親の体を握っていたモビルスーツを直撃。帰還したウッソは、血の滴る母親のヘルメットだけを持ち帰りました。
ウッソはそのヘルメットを「母さんです……」と言いながら手渡し、受けとったマーベットはヘルメットのズシリとした重みに表情を一変。具体的な言及はありませんでしたが、そのヘルメットの中に“何が入っている”のかは明確に伝わる、あまりにもショッキングなシーンでした。
このほかにもガンダム作品では、主人公の親がモビルスーツの開発に携わっているケースが目立ちます。アムロ・レイの場合もそうですが、主人公の家族が幸せに描かれていることは少なく、ほとんど何らかの問題をかかえていたのが印象的です。