■冷酷無比に見えてコミカルな部分も?
しかも桃白白は、ただ恐ろしいだけの男ではない。先に紹介した「“舌”で相手のコメカミを突いて殺す」「自分で投げた柱に飛び乗って高速移動する」といった破天荒かつ豪快な技を披露したかと思えば、『ドラゴンボール大全集』(集英社)の中では「脱サラして殺し屋を始めた」といった、ちょっとトボけた経歴も明かされている。
依頼人に対するギャラ交渉もユニークで、一人殺すのに1億ゼニーを要求しながら、すぐさま「今年はわたしの『殺し屋さん20周年記念キャンペーン』で半額セールを実施中である」と値下げ。本人はいたって大まじめに語っていたのがとても面白かった。
依頼の関係者や、任務とは無関係な人には比較的まともに接するかと思いきや、道着を直してもらった仕立て屋に、代金のかわりに「殺しを請け負うこと」と提案。この申し出を断られると、桃白白は何の罪もない仕立て屋をいきなり殺害する。そんな桃白白の一連の行動は理不尽極まりないものだが、あまりにもハチャメチャすぎて逆に興味をそそられる面もあった。
■世界一の殺し屋のプライドとは?
見ようによってはニヒルでダンディな殺し屋・桃白白だが、戦い方にこだわりは無い様子。相手が手ごわいと分かると突如土下座をして油断を誘い、手りゅう弾を投げつけるような卑劣な手も平気で使う。
さらに一度敗れた悟空に復讐するため、自らの肉体をサイボーグ化。これまでの殺し屋稼業で貯めた資金を全額投資するという執念を見せたが、そこには己の体だけで戦おうという武道家らしいプライドはいっさい見当たらなかった。
このようにどこまでもズルく、姑息な悪人であることは間違いないのだが、それでもなんとなく目が離せないキャラクターだったことは否めない。個人的には、桃白白というキャラクターに不思議な魅力を感じていたとさえ思えるほどだ。