■星先生の無表情が独特な読み心地を生む

 とにかく内容としてはぶっ飛んだことが起きるわけではないのです。

 1話目でいうと、星先生の担当クラスの学級日誌の備考欄でいつからか始まった「絵しりとり」。ひそかに楽しみにしていた星先生なのですが、この日の答えがどうしても分からない。

 といったところから始まるんですよ。なんとなくありそうじゃないですか。

 そこからほとんど星先生の想像と職員室の隣の席の先生との会話だけでめちゃくちゃ面白くしていくんです。この会話ひとつが、いちいちとっても面白い。そして周りを固めるキャラクターも突出して変な人ってわけではないのに、しっかり個性があり全員が愛らしい。

 これってすごいことだと思うんです。分かりやすく強烈なキャラってわけじゃないのに全員を立たせるって。その面白さをさらに倍増させているのが先生の描く「絵柄」だと思います。

 絵柄はものすごくキレイで味のある感じなのですが、主人公の星先生がいい意味で無表情なんですよね。

 無表情さが飄々&淡々さを倍増させて、シュールさを際立たせているのに、なぜかギャグ感は薄れてオシャレさを増す不思議な読み心地を生んでいる原因なのかなと自分の中で思っております。自分の中で勝手に思っているだけなので和山先生ファンの方、怒らないでください。

 とにかく星先生の日常は事件とも呼べない不思議なことがいろいろ起きていく。

 学校に犬が入ってきて教室がざわつく。授業中に漫画を描いている生徒がいる。自習中に各々好き勝手にしゃべる。学生あるあるですよね。しかしこれが和山先生にかかるとすべてがとんでもない展開になっていくんです。

 こんなに面白い高校があるなら是が非でも教育実習に行かせていただきたい。生徒にめちゃくちゃ変なあだ名つけられるだろうな……。余談ですが、僕の学生時代一番変なあだ名の先生は、理由こそ覚えていませんが「デビューひろみ18歳」でした。

 ラストで話がそれましたが、未読の方はぜひ読んでみてください。『このマンガがすごい2021』オンナ編1位の実力はすごいですよ。

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