■超シュール作家の最新作がまさか
最近そこで読んで、特に面白かった漫画が、今回紹介したい漫画『三日月のドラゴン』なんです。作者は長尾謙一郎先生。そう。『おしゃれ手帖』『ギャラクシー銀座』や『クリームソーダシティ』という、超シュールな漫画を描かれていた長尾先生の最新作です。
僕が長尾作品に初めて触れたのは、毎週読んでいるスピリッツで連載していた『ギャラクシー銀座』でした。豪邸に引きこもってイタズラ電話をくり返す青年・竹之進の、母親との奇妙な生活を描いたストーリー。主人公の幻想と現実が入り混じりサイケデリックな空気感が、読者の五感をバッキバキにしてくれました。「シュール過ぎて嗚咽しながら読んだ」という感想が出るほどシュールな作品ばかりだった長尾先生ですが、2019年から連載をスタートした最新作がなんと……超王道ストーリーの空手漫画だったんです。
……えええええええええええーーーー!!!!!
最初に『三日月のドラゴン』を読んだときは、長尾先生の作品だと気づかずに読んでいました。それほど違和感ない王道の空手漫画なんです。シュール漫画描いてたけど、王道漫画も面白いって、やってることほぼピカソ! シュールも描けるけど、普通の画もめちゃくちゃ上手いってピカソやん!!
気づいたときはゾッとしました。今までの作品とのギャップに。テレビで見てた清楚系の女優さんの楽屋にあいさつ行ったら思いっきりタバコふかしてたぐらい、ギャップに震えました。
そのストーリーは「不良に目をつけられてイジメを受けた主人公が、強くなるために空手を習う」というストーリー! おい令和やぞ? 今どき、そんな王道が面白いんか? と思うでしょ? 思うんですが……
これが超面白いんです!
高校一年生の月島龍之介が、今どきこんなやつおらへんやろ? っていうぐらいええ奴で、まっすぐな主人公。そんな奴が不良に負けまいと、頑張って空手を習うんです。
今までのシュールな作品が、ファミレスのドリンクバーでジュースから端っこのコーヒーまで全部入れてついでに絵の具を5色ぐらい混ぜたようなドロドロした味だとしたら、今回の『三日月のドラゴン』は、サザンの曲がかかるキラキラした景色の中で冷たいサイダーを飲んだような爽やかな読後感!
過去の長尾作品を知っている人からしたら、頭がクラクラすると思います。ですが前作を知ろうが知るまいが面白いのは、最初この作者の作品と気づかずに読んでいた僕が証明しております。みなさんもぜひ、頭クラクラしてみてください。