鳥山明氏による不朽の名作『ドラゴンボール』(集英社)は、主人公・孫悟空を始めとする個性的かつ正義感あふれるキャラクターたちが活躍するバトル漫画。1984年の連載開始以降絶大な人気を誇り、いまだに新たなグッズなども登場。最近も今年9月発送予定の「ピッコロ大魔王」のフィギュアの予約が始まったばかりだ。
そのピッコロ大魔王のように、作中には悟空たちと敵対する諸悪の根源のような悪者が登場。想像以上に残虐なふるまいを見せ、読者をドン引きさせたキャラクターも多い。
しかし、どんな極悪非道な悪者であっても、状況が変われば主人公たちと手を組む展開が訪れるのは少年漫画のさだめ。いわゆる“光落ち”と言われる、こうした展開は『ドラゴンボール』にも少なからずあり、かつて死闘を繰り広げた敵が頼もしい味方となる流れにワクワクした人もいることだろう。
そこで今回は極悪な敵から頼もしい味方へと転向した、3名の『ドラゴンボール』キャラをあらためて振り返ってみたい。
■因縁のライバルからの共闘
物語序盤のノホホンとしたコミカルな『ドラゴンボール』の世界観を、突如恐怖のどん底に突き落としたのが「ピッコロ大魔王」だ。ピッコロ大魔王率いる軍団は、悟空の大切な仲間であるクリリン、亀仙人、チャオズらの命を平然と奪い、大都市を遊び半分で消し飛ばすような徹底した“悪”として描かれた。
そのピッコロ大魔王も、悟空の獅子奮迅の活躍により倒されたかに思えたが、死の間際に自分の分身とも言える後継者を残す。それが天下一武道会でマジュニアを名乗った、2代目・ピッコロだ。
このピッコロは、初代ピッコロ大魔王の遺志をしっかりと受け継ぎ、宿敵である悟空との戦いに臨む。このときのピッコロは周囲の人間に及ぼす被害も考えず大技を繰り出すなど、明らかに悪の存在であり、悟空に敗れて命を助けられたあとも感謝することなく、どこかに飛び去っていった。
しかし地球にサイヤ人という脅威が迫ったとき、ピッコロは悟空との“共闘”の道を選んだ。サイヤ人のラディッツを相手に2人は大苦戦しながらも、ピッコロの魔貫光殺砲で悟空もろともラディッツを殺害。一応、父の敵の悟空も同時に倒したことになるが、さらなる強敵の存在を知ると、ピッコロは悟空の息子である悟飯を一人前の戦士として育てることを宣言する。
宿敵の息子・悟飯をたくましく成長させた上、ベジータやナッパが襲来したときは悟飯をかばって死んだピッコロ。再び生き返ったあとは、もはやピッコロ大魔王としての悪の片鱗を覗かせることはなく、仲間たちを守る頼もしい存在、そして神様として地球を見守っていくことになる。
悟空との正々堂々とした戦いや、同じナメック星人のネイルや神様と同化したこともピッコロの内面に影響した可能性は高い。だが、ピッコロの心境にもっとも大きな変化をもたらしたのは、幼い孫悟飯と共に過ごした1年弱の穏やかな時間だったのかもしれない。