■『宇宙戦艦ヤマト』では意外な苦労秘話も

2018年10月13日開催『ささきいさお アニソンLIVE 2018』より

――歌い方といえば、『UFOロボ グレンダイザー』と同様に世界中に多くのファンを持つ『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌もはじめは苦労されたとか?

ささき もともと、『宇宙戦艦ヤマト』は (オーディションの段階で)僕以外の方も歌っていてキーも高かったんですよ。それで僕が歌うことになった際、キーを下げた譜面を用意してくれたんですけど、そのときに手違いで譜面から♭の調号が抜けてしまって、本来はハ短調の曲なのにハ長調になっていたんです。当時はカラオケの用意もなく、譜面だけが頼りだったので、何となく「おかしいな?」と思いつつも、すぐにレコーディングと言われていたので一生懸命に覚えて、練習して。いざスタジオに行ったら、上手く歌えなくて焦りました(笑)。しかも……。

――しかも?

ささき 現場ではみんな言うことが違うんですよ。作品プロデューサーの西崎義展さんが「哀愁を込めろ」とか「ちょっと寂しげに歌え」と言えば、作曲家の宮川泰先生は「とにかく元気よく歌ってくれ」って(笑)。当日はバラードから入るパターンとか、スローから入るパターンとかいろんなバージョンが用意されていたんですけど、宮川先生ははじめは何も言わなくてずっと黙っていて。それで何度もいろんなバージョンを歌って、その後にあのイントロが入っているバージョンの順番になったら、いきなり「作品プロデューサーが何と言おうと、僕の言うとおりにただただ元気よく歌ってくれればいいから」と。今にして思えば、最初から宮川先生はイントロから入るバージョンを一番気に入っていたんでしょう。

――なるほど。あの勇壮なイントロはまさに『宇宙戦艦ヤマト』という作品のイメージにピッタリですもんね。

ささき 実際、あのイントロから入るバージョンが一番流行りましたしね。そういうわけで、録音テイクではとにかくたくさん歌わされて、最後のほうは声もかすれてきて半ばやけっぱちになっていました。でも、結果的にはそれが良かったみたいです。声をからしているのが作品に通じる悲壮感が上手く表現できていると判断され、小細工なしで歌ったことでかえって歌声に勢いやスケール感が出たようで採用になりました。

――『宇宙戦艦ヤマト』はアニメ史上に残る名曲であることはもちろん、2009年には高校の音楽の教科書にも掲載されるなど誕生から50年近く経った今でも世代を超えて多くの人たちに愛されています。

ささき そうですよね。だからこそ『宇宙戦艦ヤマト』に関しては聴いてくださる方も崩して歌ってほしくないだろうし、僕の方も崩して歌いたくない。『君が代』を歌っているような気持ちで歌わないと“ヤマト”に対して失礼だと思っているんです。それにあの曲はアレンジもいいし、歌っていて本当に飽きないんです。逆に言えば気の抜けない、スゴく難しい曲なので歌うときは今でも毎回挑戦する気持ちで歌っています。

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