■ニュータイプ専用機に挑んだエースパイロット
おそらく歴代ガンダムシリーズに登場する「名も無きパイロット」の中で一番人気があるのは、OVA『機動戦士ガンダムUC』のepisode1(テレビアニメ『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』第1話)でクシャトリヤに立ち向かったパイロットではないでしょうか。
“袖付き”と呼ばれるネオ・ジオン残党軍が誇るニュータイプ専用機「クシャトリヤ」に乗っていたのは、強化人間のマリーダ・クルス。こちらはバリバリの主要キャラクターです。
そしてクシャトリヤは『機動戦士ガンダムZZ』に登場したクィン・マンサを小型にしたような重火力を持つ強力な機体。オールレンジ攻撃が可能なファンネルも実装されていました。
それに対するのはロンド・ベル隊に属するジェガンタイプ3機からなる編隊。クシャトリヤの遠距離からのファンネル攻撃を受け、一瞬のうちにジェガンD型の僚機2機を失ってしまいます。
それでもスターク・ジェガンに乗るパイロットは怯みません。即座にクシャトリヤに向けてバズーカで反撃の一撃を放ち、両肩に備えたミサイルを射出。拡散弾によりファンネルの動きを牽制しました。
これを撃ち切ると、すぐにスターク・ジェガンの両肩のミサイルユニットをパージ。機体を軽量化させて機動力を上げると、ビームサーベルを抜いてクシャトリヤに急接近。両者ともにサーベルを交錯させ、互角の格闘戦を展開します。
そしてスターク・ジェガンのパイロットは月の光を背にしながら、目くらまし効果も加味してのサーベルによる刺突攻撃を敢行。しかし、目前でクシャトリヤのバーニア噴射によって突進が阻まれ、その隙をつかれてコクピットごとサーベルで両断されてしまいました。
最後に名も無きパイロットの「袖付きめ!」という残留思念のような声が聞こえますが、その声を聞いたかぎりではかなり熟練のエースだったのでは……と妄想が膨らむ場面でした。
いくらエース用にカスタムされたスターク・ジェガンとはいえ、ベースになっているのは量産機。それでもワンオフ機体のクシャトリヤに堂々と挑み、わずかな勝ち筋を狙ったパイロットの技量の高さは、あのわずかなシーンだけで十分に感じ取ることができました。