行く年を惜しみながらも、新しい年に希望をはせるこの頃、いかがお過ごしでしょうか? 今年もこのときがやってまいりました!……そうです、『ムーディ漫画大賞』の発表です!!(知らん知らん)
2020年はコロナの影響で自宅で過ごす時間も多かったですが、そんなストレスも"右から左に受け流してくれた"のが漫画でした。今年もたくさんの漫画がありましたが、独断と偏見と思いっきり好みで!『セリフ部門』『キャラ部門』『作品部門』を発表させていただきます。
……それでは最初のムーディ漫画大賞『セリフ部門』は、吉本浩二先生自身を主役にした節約ドキュメント漫画『定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ』(講談社)から選ばせていただきました。
45歳、月のこづかい額2万1000円。世間では平均4万弱と言われるお小遣いだが、その約半分。お酒を飲まない吉本先生は節制に節制を重ね、そのお小遣いを大好物の「お菓子」に使いたい! しかし、子どもにオモチャをねだられたら、その月は終わり……!! 毎月ギリギリの選択を迫られる主役・吉本先生。イオンのお菓子コーナーで脂汗をかきながら「買うのか買わないのか……?」と自問自答を繰り返すシーンは、SLAM DUNKの山王戦ぐらい手に汗握ります。
面白かったので、漫画仲間の麒麟の川島さんにお薦めしたんですが、そのあまりの節制ぶりに……
「すごく面白かったです。ただ、700円のコーヒーを飲みながら読んだら心が壊れそうになりました」
とおっしゃっておりました(笑)。そんな「こづ万」から、今回のムーディ漫画大賞「セリフ部門」に輝いたセリフがこちらです!
『今月もこの1万円でいろんなお菓子買いまくるぞ~!!』
なるべくなら自分の人生では1回たりとも言いたくないセリフです。ダサいセリフなんですけど、面白い、ボキャブラ風に言うと「ダサおも」で大好きなセリフです。このシーンは、この漫画の名物ショット「小遣いの毎月の予定グラフ」をバックに言われたセリフです。毎回あるこのシーンが、まぁダサい!(笑)。
他にも「カレーせん139円かよ~~~!!アゲアゲだぜ~~~!!」など、死語を含んだダサいセリフが味となって、最高の一冊にしています。同作には吉本先生の節約以外にも、「Pontaカードの男」や「手作り弁当の男」など、少ない小遣いでやりくりする登場人物が続々と出てきます。節制する中での各々の楽しみ方が、なぜか真似したくなる。これを読んで、あなたも一度、月2万1000円で過ごしてみてはいかがでしょうか?
■「飯テロ」拷問に屈する姫様
続いてムーディ漫画大賞『キャラ部門』に選ばれたのは、『少年ジャンプ+』(集英社)で連載中の『姫様“拷問”の時間です』(原作・春原ロビンソン、漫画・ひらけい)から、主役の【姫様】です!!
この漫画の内容、タイトルから想像するイメージとはまったくの真逆のギャグ漫画であります。従来のギャグ漫画とは違い、毒がまったくなく、誰も傷つけない、まるでぺこぱの漫才のよう! 新たな時代にアップデートされたギャグ漫画と言われています。
魔王軍に捕まり、国王軍の秘密を聞き出すために拷問される姫様。しかし、ここで言う「拷問」はうまそうな食事や楽しい遊びのことであり、いわゆる「飯テロ」。鎖につながれた姫の前に、拷問官が差し出したのは「焼きたてのトースト」バターものっていて、ほんのり溶けてパンに染みている……。しかし魔王軍と前線で戦った、国王軍第三騎士団“騎士団長”でもある姫が、パンごときで屈するわけがないと思いきや、姫様の顔を見ると、めっちゃにやけてる……!!
そしてひと言、
「おいしそう……」
めちゃくちゃ屈しそう……!!
ただ、国王軍第三騎士団“騎士団長”である姫は、ここは我慢します! さすが国王軍第三騎士団“騎士団長”! しかし! 拷問に耐えたと思いきや、拷問官が新たに持ってきたものは、
「ビーフシチューを食べた後のお皿」
これにパンを“へつったら”絶対美味しいやつぅううーー!!! と、飯テロに堪え頑張るが大体屈してしまう、姫様の姿が、とても面白く、とてもかわいいのです。ギャグ漫画好きだけではなく、グルメ漫画好きな方も楽しめるキャラクターと作品になっております。
■日常を面白く描く化け物、和山やま
それでは最後に、2020年のムーディ漫画大賞『作品部門』に輝いた作品は……和山やま先生『女の園の星』(祥伝社)です!!!
僕は面白い作品を見ると、面白いを通り越して、「気持ちいい」と、感じてしまうのですが、この「女の園の星」は、めちゃくちゃ気持ち良かったです……!!
「人を狂暴化させる謎のウイルスが蔓延」とか「現代にタイムスリップした織田信長がサラリーマンになって天下統一」とか、変わった設定でもなんでもなく、「女子校教師の日常」を描いてるだけなのに、なんでこんなに面白く描けるんですか!!
和山やま先生は日常を面白く描く化け物です……!
ある女子校の2年4組担任の国語教師の星先生。星先生のクラスの生徒たちが、学級日誌の備考欄で繰り広げる「絵しりとり」や、真面目そうな生徒が授業中にこっそり描いていた、登場人物が続々と死んでいく漫画「エターナルカオル」など、口角が上がりっぱなし目尻にシワ寄りっぱなし右肩上がりっぱなしの(?)秀逸なストーリーがいっぱいです!
セリフにもセンスがあふれ出ています。中でも、他のクラスが飼っていた犬が星先生の教室に来たときに、そのクラスの先生が「いやぁすみませんね星先生~! うちのクラス犬が迷惑かけて」と言うセリフがすごく好きです。あたかも日常で普通に使われているようにサラッと言われた「クラス犬」。芸人目線から見てもレベルの高い“ボケ”ばかり! とにかく全コマ面白いので、ぜひとも読んでほしいです……!!
「ムーディ漫画大賞」考え出したら面白い漫画多すぎて、選びきれず、今までで一番締め切り遅れました……! それでは来年も、面白すぎて“受け流せない”漫画を誰よりも多く読みたいと思います! それでは皆様、よいお年を。