昨年末に公開されて以降、大ヒットとなっている『劇場版 呪術廻戦 0』。前回に引き続き、朴 性厚監督にインタビュー。少年期から青年期、アニメーターになってから影響を受けたアニメをお聞きしました。
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朴 性厚監督が好きなアクション映画ベスト3!
Q.監督は本作が劇場映画初監督作になりますが、どんな映画に影響を受けてこられましたか。
「いろんなジャンルが好きなのですが、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』は好きですね。ビジュアル含めて、ヒーローもの、アンチヒーローを描くうえでは本当に参考になることが多いです。あとはジョージ・ミラー監督、トム・ハーディ主演の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も特別な一作です。本当にこれはやられた!という気持ちになりましたし、エンターテインメントとしてめちゃくちゃおもしろかったですね。シンプルな話にも関わらず、いろんなシーンのテンポ感、スピード感がすごく好きで、始まってから終わるまでがあっという間の作品です。あとは韓国映画も大好きで、パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』。ロングテイク(長回し)で主人公がいろんなものを破壊していくシーンがあるのですが、それがめちゃくちゃ好きです。個人的には、そこに影響を受けて、『呪術廻戦』でもロングテイクをやりたいなと思い、スタッフを苦しめたというところがあります(笑)」
Q.やはりアクション映画には刺激を受けてこられた、と。
「ラブストーリーも好きだし、コメディも好きだし、人間ドラマも好きなのですが、どこかアクション映画に目がいってしまうことが多いように思います。ただ、アクション映画も含めて、ちゃんとしたドラマがそこにないと、すべてのコンテンツは成立しないと思っているので、今回の『劇場版 呪術廻戦 0』でも乙骨という人間のドラマをきちんと描かないとバトルシーンが活きないだろうと考え、作りました」
Q.挙げていただいた作品は、ダーティな主人公が登場する点で、『呪術廻戦』と共通点が多い映画ですよね。
「そうですね。『呪術廻戦』はカーアクションが出てこないんですけど、めちゃくちゃ好きなので、いつか挑戦させていただきたいです(笑)」
『マクロス』『ドラクエ』『ビバップ』たくさんのアニメに影響を受けてきた
Q.監督のアニメとの出会いについても伺いたいのですが、少年時代に夢中になった作品をお教えいただけませんでしょうか。
「自分の中での大傑作は『超時空要塞マクロス 愛・覚えていますか』という作品です。それを観て、アニメの世界に入りたいと思いましたから。もっと子どもの頃でいうと、スタジオ・コメットで作られた『ドラゴンクエスト』が大好きでした。韓国でも大人気で、僕が最初にスタジオコメットという制作会社に入った理由は、その作品がきっかけなんです。その会社に入って、手書きの設定などを観て、めちゃくちゃ喜んでいました(笑)。当時、韓国で『ドラゴンクエスト』の翻訳されたゲームがなかったので、『ドラクエ』はそのアニメで初めて知り、ゲームは日本に来てからやり始めました」
Q.『マクロス』はやはり、戦闘シーンなどがお好きなんでしょうか。
「ロボットの戦いも好きなのですが、音楽も好きで。とくに最後のリン・ミンメイの歌とともに戦うシーンは今観ても感動してしまいます。その影響もあり、バトルシーンでボーカル曲を入れたいなと思ったりしますし。音楽ということで言えば、『カウボーイ・ビバップ』も大好きな作品です。『ビバップ』も様々なジャンルの音楽を使った作品ですよね。お話としても、スペース・オペラというか、ホラーやノワール、コメディ、SF、全部が一つの作品としてマッチしているのが『ビバップ』の魅力だと思います。そこは『呪術廻戦』の世界の中でも邪魔にならないように、そうしたいろんなジャンルのテイストを入れ込む工夫をしています。そして、なんといっても『エヴァンゲリオン』にもすごく影響を受けました」
次回の最終回では、後進のアニメーターの方への想いも!
『劇場版 呪術廻戦 0』
全国公開中
原作:「呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校」芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
監督:朴 性厚
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
声の出演:緒方恵美 花澤香菜 小松未可子 内山昂輝 関 智一 中村悠一 櫻井孝宏
配給:東宝
© 2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 © 芥見下々/集英社
https://jujutsukaisen-movie.jp/
●パクソンフ
韓国出身、アニメーター、アニメーション監督。大学卒業後に、スタジオコメットに入社。以降、現在までアニメーターとして原画、作画監督などを務めている。主な監督作に『牙狼〈GARO〉-VANISHING LINE-』(17年)、『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』(20年)、『呪術廻戦』(20年)。