福山潤がサンキュータツオと語り合う! アニメと日本語の現在(2)福山「違和感を正しく説明する言葉を持っていないことが怖い」の画像
日本語学者として活躍する人気芸人・サンキュータツオ(左)と声優・福山潤(右)のトークは、真面目だけれど笑いの絶えないものに。

お笑いコンビ・米粒写経として活躍し、大学院卒の日本語学者でもあるサンキュータツオ。10月22日に発売された『福山 潤 プロフェッショナルトーク』の発売を記念し、その対談の一部を先行公開。第2弾の今回は、福山が感じる、収録現場での日本語に対しての危機感を語り合う。

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「芝居をする際に、日本語の助詞は大切な要素」(福山)


福山 僕がタツオさんにずっと聞きたいと思っているのが「日本語」についてなんです。
タツオ それは以前からおっしゃっていましたね。たしか『コードギアス 反逆のルルーシュ』劇場3部作の舞台挨拶の長距離移動中にもそんな話をしていましたよね。
福山 そうなんです。ちょうどその頃、日本語をあらためて勉強したいと思っていた時期だったので、失礼かなとは思いつつ、日本語学者でもあるタツオさんに「『私は』と『私が』の違いってなんですか」と聞いたんです。僕はひそかにものすごく細かいニュアンスまで含めた文法論的な回答が返ってくるのだろうと身構えたんですが、タツオさんからの答えは「とくに違いはないですね」でした(笑)。
タツオ 口語として日常生活で使う場合は使い分けますが、文法的にはどちらでも問題ないですからね。文脈を特定する必要がありますし。もちろん、専門的に違いを語り始めたらキリがないほど猛烈に違いはあるっちゃあるんですが…。
福山 けれど、僕としてはそれが大問題なんですよね。芝居をする際には「助詞」ってかなり重要な要素で、それによって意味合いがかなり違ってくるんです。それが日本語学的にどちらでも問題ないとなると、声優にとって正解がないことになるので、とてもやっかいなんですよね。そもそも日本語自体が日々変化していく中で、一体何を規範にすればいいのか、少し絶望しました(笑)。僕らが日々喋っている日本語って、もはや概念に過ぎないのかとさえ思ってしまって。
タツオ でも言葉や用法に対してそこまでの問題意識をもっている声優さんは、かなり珍しいと思います。上の世代の日本語を聞いて育ち、かつ下の世代の日本語にも敏感でないとそうはならないですし、さらにいえば自分自身も数多くのセリフを喋ってきた経験があるからこその危機感だと思います。
福山 セリフに違和感をもったとしても、その違和感を正しく説明する言葉をもっていないことがすごく怖いんですよね。現場の人間がそうなってしまうと、誤用されがちな「役不足」や「すべからく」なども、いずれは間違った意味で使われるようになるかもしれないと思ったりします。
タツオ 確かに。実際今では「敷居が低い」や「違和感を感じる」「させていただきます」などは普通に使われているケースも多いですから。本来の日本語としては間違っているんですけれど。

(Part3へ続く)

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彼らのアニメと日本語をめぐる対談も次回でラスト。トークセッションの詳細は、『声優MEN Vol.20』(発売中)と、その対談のロングバージョンを掲載した書籍『福山 潤 プロフェッショナルトーク』(発売中)で!

 

■PROFILE
●福山 潤 ふくやま じゅん
11 月 26 日生まれ、大阪府出身。 2007 年、初代声優アワード主演男優賞受賞。『無敵王トライゼノン』で初主演。代表作に『コードギアス 反逆のルルーシュ』(ルルーシュ・ランペルージ)、『吸血鬼すぐ死ぬ』(ドラルク)、『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』(スマット)、『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(マツモト)、『暗殺教室』(殺せんせー)、『七つの大罪』(キング)、など。近年はアーティストとしても活躍。

●サンキュータツオ さんきゅー たつお
1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学大学院卒。大学在学中に、居島一平とお笑いコンビ「米粒写経」を結成。また数々の大学で日本語学の講師を務め、『広辞苑』第7版では言葉の選定を担当した。近年は『東京ポッド許可局』でラジオレギュラーを務め、テレビ、配信番組などに出演する他、多数の連載を持つ。著書に『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』、『これやこの サンキュータツオ随筆集』など。新著『国語辞典を食べ歩く』が発売中。

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