芸人にして日本語学者として教壇に立ち、ラジオや著作など幅広い活躍を続けるサンキュータツオ。声優・福山潤と大のアニメ好きでもある、サンキュータツオと日本語をめぐる対話を書籍『福山 潤 プロフェッショナルトーク』から抜粋してお届けします。
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「『エヴァ』はアニメと自分の人生が不可分になる体験だった」（タツオ）
福山 タツオさんと最初にお会いしたのは『ファイ・ブレイン 〜神のパズル』のドラマCDの収録現場だったと思います。
タツオ そうでしたね。僕は福山さんのことは『巌窟王』で初めて認識して、「『ブギーポップは笑わない』や『成恵の世界』の方だったんだ！」と分かって、意識して追いかけるようになりました。福山さんと同じくらいの世代、だいたい現在40歳前後の男性声優さんたちをウォッチするのが好きなんです。
福山 どうしてですか。
タツオ 福山さん世代の声優さんで、20代で世間的に認知された方は、そのあとアーティスト活動を始められたり、事務所を辞めてフリーになられたりと、わりと新しい道を模索しているじゃないですか。顔出しをされたうえでマルチに活動されている方も多くて、そうした動きは福山さんたちより上の世代には珍しいですよね。もちろん山寺宏一さんのような方もいらっしゃいますが、それでも前例が非常に少ない状態で、いろいろと模索しながら声優道を歩んでいるパイオニアの方々のような気がするんです。福山さんをはじめとして、この世代の男性声優がこの先どう進化していくのか、そこにとても興味があるんですよ。
福山 タツオさんは芸人でありながら日本語学者でもあり、そのうえでアニメにも精通されていて。そもそもどうしてそんなにアニメに詳しくなったんですか？
タツオ 意識的にのめり込んだのは『新世紀エヴァンゲリオン』が深夜に再放送された頃以降だと思います。深夜アニメの本数がどんどんと増加していったことを受けて、とりあえずやっているアニメはすべて観てみようと思い立って。
福山 じゃあ『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』はかなり感慨深かったのでは？
タツオ そうですね。テレビシリーズが1995年に始まって、その結末を見届けるまでに26年もかかりましたから。そんなコンテンツはそうそうないです。完結した今なら、最初から最後までイッキ見をすることも可能ですけど、リアルタイムで追っていた僕らはずっと新作を待ちながら、心のどこかで『エヴァ』のことを思いながら日常生活を送っていましたからね。庵野（秀明）監督への複雑な思いもファン特有でやっぱりありましたし（笑）。でも今になって振り返ると、そんな時間も含めてアニメを楽しんでいたわけで、いちばん美味しく作品を味わわせてくれた作品だったのかなとも思いますね。
福山 なるほど。
タツオ そういう意味で言えば、福山さんが主演されている『コードギアス』シリーズもそれに近いものがありますよね。2006年から始まって、まだまだ新作が作られ続けていますから。シリーズモノを追い続けるのって、自分自身の人生と作品の歴史が不可分になるところがあって、そういうところが魅力でもあるんですよね。
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サンキュータツオがこよなく愛するアニメの話から、やがて日本語論へ。対談の続きは全３回でお届け予定。さらなる詳細は、現在発売中の「声優MEN VOL.20」の連載と、10月22日発売の書籍『福山 潤 プロフェッショナルトーク』でご覧いただけます。
■PROFILE
●福山 潤 ふくやま じゅん
11 月 26 日生まれ、大阪府出身。 2007 年、初代声優アワード主演男優賞受賞。『無敵王トライゼノン』で初主演。代表作に『コードギアス 反逆のルルーシュ』（ルルーシュ・ランペルージ）、『吸血鬼すぐ死ぬ』（ドラルク）、『新幹線変形ロボ シンカリオンZ』（スマット）、『Vivy -Fluorite Eye's Song-』（マツモト）、『暗殺教室』（殺せんせー）、『七つの大罪』（キング）、など。近年はアーティストとしても活躍。
●サンキュータツオ さんきゅー たつお
1976年生まれ、東京都出身。早稲田大学大学院卒。大学在学中に、居島一平とお笑いコンビ「米粒写経」を結成。また数々の大学で日本語学の講師を務め、『広辞苑』第７版では言葉の選定を担当した。近年は『東京ポッド許可局』でラジオレギュラーを務め、テレビ、配信番組などに出演する他、多数の連載を持つ。著書に『学校では教えてくれない！国語辞典の遊び方』、『これやこの サンキュータツオ随筆集』など。『国語辞典を食べ歩く』が発売中。
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