■やっぱりドラえもんとのび太の友情が泣ける
そしてラストに紹介するのは2013年に公開された完全新作の映画『のび太のひみつ道具博物館』。これはドラえもんの鈴が盗まれてしまったことから、22世紀にあるひみつ道具博物館に行く物語。盗まれた鈴の行方と謎の怪盗の正体を探る大活劇だが、本作の一番のポイントはこの“ドラえもんの鈴”にあった。
盗まれた鈴にはドラえもんの大切な思い出が詰まっており、それはのび太との初めてのケンカの日までさかのぼる。ケンカ中にのび太の手がぶつかったせいで、鈴をドブに落としてしまったドラえもん。ドラえもんは探すのを諦めたが、のび太は泥だらけになりながら一生懸命探してくれた。ケンカの後にのび太の優しさにはじめて触れ、一緒に笑いあった大切な友情の鈴。「あんななんでもないこと、のび太くんは忘れちゃってるだろうけど……」とドラえもんがひとり思い出に浸る、切ないシーンとなっている。他の映画『ドラえもん』でもテレビシリーズでも、のび太とドラえもんの友情はたびたび描かれているが、『のび太のひみつ道具博物館』では特に「言葉にしないけどそこにある」二人の友情が色濃く表現されている。
子ども向け作品だからといって敬遠してしまうのはもったいない。今のドラえもん作品からは製作陣からの「今の子どもたちへ、更にむかし子どもだった大人たちへ贈る作品」という熱意がものすごく伝わってくる。現在公開されている『のび太の新恐竜』は双子の恐竜の赤ちゃんを孵化させたのび太が恐竜たちの故郷を目指して白亜紀に向かう物語で、子育て世代の人に響くシーンが満載の作品。この機会に卒業してしまったドラえもんに、もう一度会いに行くのはいかがだろうか? 彼らの勇気と愛にぜひ触れてきてほしい。
(文・とりか)