■新ドラえもんでは親世代の心情も描かれるように
次に紹介したいのは2016年公開の『新・のび太の日本誕生』。ある日算数のテストで0点を取ってしまったのび太は、ママに今日からは外出も昼寝も、漫画もテレビも禁止と説教を受けてしまう。同じタイミングでしずかちゃん、スネ夫、ジャイアン、ドラえもんまでもそれぞれの理由で家出を決意し、みんなで誰もいない7万年前の日本へ史上最大の家出をすることに。しかしその7万年前の少年・ククルが時空乱流に巻き込まれのび太たちの時代にやってきてしまう。そこでのび太たちは不死身の精霊王ギガゾンビの存在を知ることになる……。
こちらも1989年の『映画ドラえもん のび太の日本誕生』からストーリーの大幅な変更はないが、本作で注目したいのは、のび太のママの描き方。ママがのび太にきつ~いお説教をするのはいつものこと。しかし本作ではママの苦悩がこまやかに描かれている。
家出をしたのび太が夜遅く帰宅したことに気づいたママは、部屋に駆け込み無事な姿で帰ってきたことを知ると、ホッとして涙を浮かべそうになる。しかしそれらをこらえ説教しようと肩をつかむが、体を震わせおびえているのび太の姿を見て言葉を続けるのをやめる、そしてひと言「ごはん出来てるわよ」と優しく声をかけるのだ。
さらに本作のラストでは1989年版では描かれていなかった、ママとのび太の後日談も描かれる。本作のキャッチコピーには「パパは、20世紀の『日本誕生』を見た。僕は、21世紀の『日本誕生』を見る。」という一節もあり、親世代のキャラたちにもスポットが当てられていた。本作が親世代になった大人たちへ贈る一作だったのは間違いない。