フジテレビの日曜夜に不動のポジションを築いている『サザエさん』は2019年10月に放送50周年を迎えた。『サザエさん』のレギュラーキャラは、1985年にプロデューサーの変更とともにマイナーチェンジがあったが、それ以降はほとんど変わらない。だが、登場頻度と描き方に変化が起きている。
最近、顕著なのがタイコとイクラの出番減少だ。日中にタイコがイクラを連れて磯野家を訪問する展開は激減。また、ストーリー上の必然性もなく、タイコがイクラと自分の実家に帰っていて登場しないケースがたびたびあった。また、伊佐坂家の面々も登場回数が減っており、特に浪人生の甚六は、引きこもりを心配してしまうレベルで顔を出さない。
干され気味キャラもいるが、消えた……と思われるキャラも。2011年に、長髪でヘッドフォン装着というスタイルのキャラ「大工のジミー」が新登場。主役回も作られ、異色の存在としてネットでも話題になった。だが、いつの間にか姿を消し、公式サイトや公式本にも、その名前が見当たらない。
一方、以前より出番が増えたキャラもいる。タラオの遊び友達は、リカがメイン時代が長かったが、近年はタケオの存在感がアップ。このタケオは、唯一「タラオ」と呼び捨てにし、マウンティングする稀有な人物だ。
花沢家の父娘も出番が多い。父親は波平と違い、世の中の流れを掴んでいる人物として、重宝されている。穴子さんの奥さんもしかり。サザエと情報交換を重ね、一緒にデパートに買い物に行くなど、タイコのポジションを奪っているのだ。
また、“1位かおりちゃん、2位早川さん”という、カツオの推しランキングにも変動が起きている模様。とにかく早川単独エピソードが明らかに増えている。これは、雪室俊一氏という番組開始当初から関わっていた脚本家が担当した回に多い。雪室氏は特に2010年代になり、アニメのオリキャラへの思い入れを前面に出すようになった。
極め付けがワカメのクラスメイト・堀川だ。この10年で要注意人物にキャラ変し、出番も急増。ネットで「サイコパス」と呼ばれる堀川の奇行例を挙げよう。
「わかめ」と名付けたひよこを育て、成長して卵を生んだら、それをワカメに食べさせたいと願う。将来の夢は牧師だとし、その理由を、“結婚式できれいな花嫁を間近で見られるから”と発表。人の形をした塀のシミに、「ヘイキチ」と名前を付け、そこにボールを当てる遊びを、“ヘイキチとキャッチボールする”と表現。磯野家の軒下でオタマジャクシを無断で飼い、ワカメに咎められると、「見付からないようにするよ」と反省の色ナシ。
これらはいずれも、前述の雪室氏の担当回ばかり。同氏の発言によれば、決して炎上狙いではないようだが……。
※本記事は『EX大衆』19年11月号の企画を再構成したものです。