こんにちは! コラムニストの中井仲蔵です。
さて、12月20日に『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が公開の運びとなりました。9部作の完結編ということもあり、世間は『スター・ウォーズ』で盛り上がっていますが、ここでは同シリーズの「えげつない側面」を訴えて、皆様のご機嫌を伺いたいと思います。
といっても、「ルーカスフィルムがディズニーに吸収されてからマーチャンダイジングなどの金儲け方針がエグい」とか、「画像使用などの取り扱いが厳しすぎる」とか、「8作目のアレ(ネタバレになるので書きません)はなんなんだ」などという愚痴をこぼそうというのではありません。
40年近い昔、『スター・ウォーズ』ファンのちびっ子たちが心に深い傷を受けた作品のことを、訴えようというものです。
その作品とは、シリーズで2番めに公開された『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』。「スター・ウォーズのシリーズで最高傑作はどれか」というアンケートを取れば、たいてい1位に輝くくらい今でもファンに支持されている作品です。
若い読者のために、同作が公開された1980年当時の状況をご説明いたしましょう。
それに先立つ1978年、日本に『スター・ウォーズ』の1作めが上陸し、世を熱狂の渦に巻き込みました。筆者(中井仲蔵)は、当時小学4年生。70年代の映画館は今のように指定席制ではなかったので、長蛇の列に並んで劇場に行き、そのまま居座って2回も観ちゃいました。
当時は家庭用ビデオデッキも普及しておらず、もちろんレンタルビデオショップもなかったので、ちびっ子ファンはその斬新な映像を脳に刻み込んで、次回作が公開されるのを心待ちにしていたのです。ちなみにウィキペディアで調べると、テレビで1作めが初めて放送されたのは1983年のことだったとか。本編の放送前に、タモリがダラダラとおしゃべりしていたのを見せられた覚えがあります。
さて、ということで、1980年にようやく公開された『帝国の逆襲』。当時はこれが「全9部作の5本目」というジョージ・ルーカスの構想は周知されておらず、タイトルにも「エピソード5」という文言はありませんでした。
小学6年生になっていた筆者は、2年前の感動を胸に秘め、なけなしの小遣いをポケットに、同級生の友達と『帝国の逆襲』を観に行ったのですが……。
明るく楽しい1作めと違い、続編はとにかく暗い。主人公の親友はカーボンフリーズされ、生き別れだった妹は奴隷商人に売られ、自分は片手をちょん切られるうえに、実の父親が最悪の敵だということが判明。映画監督のケヴィン・スミスは「『帝国の逆襲』は人生の縮図だ」と喝破しましたが、子どもが観るにはショックが強すぎました。
しかも、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ロード・オブ・ザ・リング』などの、3部構成のシリーズ映画が公開されるのはまだ先のこと。当時の小学生にとって、シリーズ映画といえば『007』や『寅さん』のことで、話が中途半端で終わって「第3部に続く」という形態は、あまりに予想外すぎたのです。観終わったあとに、「これで終わりかよ!」という絶叫が映画館に響き渡ったのはいうまでもありません。
結局、当時のちびっ子たちが心のモヤモヤを払拭するには、3年後に3部作完結編の『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』が公開されるのを待つしかなかったのでした。
とはいえ、40年前のあの恨みはあるものの、これまでの8作はもちろん、最初の3部作をリマスターした『特別篇』(1997年~)にくわえ、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)、スピンオフの『イウォーク・アドベンチャー』(1985年)まで観ているこちらとしたら、今回の完結編は観ざるをえないなぁ。ちょっと悔しい。(文・中井仲蔵)