人気ブロガーのかんそうさんが毎週1回『ふたまん+』にてお送りする、ドラマへの熱い“感想”。今回のテーマは、横浜流星さんと小栗旬さんの強力タッグが話題のヒューマンサスペンス『LOST10』(TBS系)。登場人物全員が怪しい雰囲気をまとい、謎が謎を呼ぶ展開の中、メイン2人の見事なバディぶりに着目します!
ドラマ『LOST10』は、北海道・支樺岳で起きた登山ツアーの遭難事故「支樺岳事件」を軸に、刑事・小駒(横浜流星)とフリーの保険調査員・直(小栗旬)が真相を追っていく完全オリジナルのヒューマンサスペンス。制作陣は、『Nのために』『最愛』の奥寺佐渡子脚本・塚原あゆ子演出・新井順子プロデュース。やっていることは例によって「謎が謎を呼び、誰かを信じた瞬間に足元が崩れる」系で、もう十分食傷気味だよと思いつつも初回から引きが強い。ドーパミンがヤバい。
メインの横浜流星、小栗旬だけじゃなく、主要キャストの10人全員がなにか抱えてて「ただのいい人」が一人もいなさそうなのが凄い。
飯豊まりえが演じる山岳ガイド・田畠は難病の娘を抱えてるし、King Gnu井口理の小児科医・吉野もただの良い医者じゃなさそうだし。斉藤由貴が演じる遭難事故で死んだ男の妻・ハルネとか、中村アン演じる遭難事故の生存者で小駒の恩師・亜矢とかも、登場人物全員が「この人、何かある」って顔してる。みんな何か隠してる。みんな何か持ってる。誰も「ただのいい人」じゃない。
謎が謎を呼び、その謎がまた謎を生み出す。謎の無限ループ。いっさい何も明かされない。それが第2話でさらに加速する。
登山ツアー参加者全員に山岳保険がかけられていて、しかも受取人が中村アン演じる中学教諭・亜矢になっていた。保険金殺人の匂いがプンプンする。でも署名がないから実質受け取れないとか、遭難で死んだ男が実は睡眠薬を盛られていたとか、その男に関する証言が真っ向から食い違うとか、もうグチャグチャ。直が金の流れを追えば追うほど、小駒が人を信じたい気持ちと現実のギャップで苦しくなっていく。
そしてラスト。飯豊まりえの田畠が、小駒たちの目の前でマンションの屋上から飛び降りる。第2話で。まだ第2話で。
電話一本で病院を抜け出し「もうおしまい! 私がバカだった」と取り乱し、娘の写真を見て「すべて丸く収まる」と言い残して飛ぶ。直の足元に血しぶきが飛ぶ。小駒はまた目の前で人を失う。
小駒にとって恩師を信じたい気持ちと、恩師を疑わなければいけない現実がぶつかり合った直後にこのシーン。脚本がヤバすぎる。視聴者を徹底的に振り回してくる。
この物語を成立させてるのは、間違いなく横浜流星の小駒と小栗旬の直だ。この二人のキャラクターと演技のバランスが気持ち良すぎる。ドーパミンの源泉がここに集中してる。二人の魅力と演技でこのドラマの面白さが何倍にも膨れ上がっている。
まず、横浜流星が演じる小駒。これがまた「ただの正義感の強い若手刑事」で終わらないのが凄い。正義感も出世欲もあるけど、田舎の署でくすぶってて、感情が前に出すぎて衝突する。短絡的で豪胆で、でもどこか繊細で、人を信じたいけど信じられないで苦しむ。
中学時代に荒れてた過去があって、当時、教育実習生だった亜矢に救われたという記憶を抱えてる。だからこそ、保険金の受取人が亜矢だとわかった瞬間の顔が苦しい。信じたい気持ちと、刑事としての線引きがぶつかり合ってるのが、表情だけで全部伝わってくる。
特にヤバいのが、第1話で亜矢と再会したときのあの笑顔。名刺を渡して「お、小駒くん?」と言われた瞬間の、嬉しそうな照れ笑い。シリアスな遭難事件のただ中で急に見せるこの笑顔が、破壊力が半端じゃない。そしてその直後に「全部疑え」という現実が押し寄せてくるから、なおさら刺さる。
山を軽やかに駆け回る身体能力の高さとか、無精ひげの感じとかも含めて、「ただのイケメン刑事」じゃなくて「なんか惜しい男」として成立させてるのが横浜流星の演技力。第2話で田畠を目の前で失ったときの顔も、過去の喪失と重なって重たい。感情を抑えきれないでいるのがリアルで、見てて胸が痛くなる。
対する小栗旬の直は、完全に「うさんくさい保険調査員」として完璧。ひょうひょうとしてて、掴みどころがない。「ありゃりゃりゃりゃ、困ったな~」と一芝居打って、ハルネと話す時間を作ったり、約束してないのに約束したふりしたり。軽い口調なのに視線が鋭くて、金の流れを淡々と追っていく。
40代になった小栗旬の「渋み」と「抜け感」がここで炸裂してる。若い小駒を煙に巻くような大人の余裕がありながら、隣の部屋に住み着いて洗濯機を借りたり、飯を作ったりする距離の近さがまた面白い。ただのクールな謎男じゃなくて、どこか人間臭い「食えない男」として成立してる。
この二人の関係性が最高に気持ち良い。最初は噛み合わなそうなバチバチ感があるのにだんだん「なんかいい感じ」になっていく。小駒が直に過去を打ち明けたり、直が小駒の弱みを見透かしながらも距離を縮めたり。組織に縛られた一直線の小駒が、自由で広い世界を知ってる直に感化されていく感じが、ただのバディものじゃなくて互いの成長を見ているみたいで良い。
小栗旬がちょっかいを出すと、横浜流星が必死に絶妙な角度で返してくるのも可愛い。互いの価値観がぶつかりながら近づいていく。
もはや「一生事件解決しなくていい」とすら思ってしまう。謎が回収されなくても、この二人の顔とやりとりを見ていたいと思ってしまうくらい。横浜流星の「信じたいけど信じられない」顔と、小栗旬の「全部疑ってるけどどこか人懐っこい」感じのコントラストが、このドラマの最大の武器になってる。ドラマがどんな結末になろうとも、二人のバディだけでも最後まで観る価値がある。
■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。


