久保帯人氏が描く大人気漫画『BLEACH』。その最終章を描くテレビアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』も、ついに最終話を迎え、物語は圧巻のフィナーレを飾った。長きにわたって作品を追い続けてきたファンにとって、感慨深い幕引きとなったのではないだろうか。
そんな物語の最終決戦において、極めて重要な役割を担ったのが護廷十三隊の総隊長・京楽春水である。長年にわたって護廷十三隊を率いてきた山本元柳斎重國の後を継ぎ、総隊長という重責を背負うことになった京楽。尸魂界、現世、虚圏という三界すべての存亡がかかった戦いでは、ふだんの飄々とした姿からは想像もつかない非情な一面を見せていった。
今回は、そんな京楽春水の印象をガラリと変えた、3つの重大な決断を振り返っていこう。
※本記事には作品の内容を含みます。
■卯ノ花烈の命をかけて挑んだ、更木剣八の力の解放
「千年血戦篇」で、滅却師(クインシー)の王・ユーハバッハが率いる「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」との戦いに備え、護廷十三隊の総隊長となった京楽が必要と考えたのは、さらなる戦力強化だった。そこで彼が目をつけたのが、圧倒的な戦闘能力を持つ更木剣八である。
剣八は並外れた強さを誇る一方、本人も気づかないうちに自らの力に強力な枷をかけていた。コミックス第58巻、京楽は剣八の潜在能力を引き出すため、初代「剣八」である卯ノ花烈に斬術の稽古を任せるという非情な決断を下す。
しかし、地下監獄「無間」で行われたのは、稽古とは名ばかりの命をかけた死闘だった。卯ノ花は剣八を何度も斬り伏せては治療し、再び刃を交える。その繰り返しによって剣八は自らに課していた枷を外し、本来の力を取り戻していく。一方、その代償として卯ノ花は命を落とすこととなった。
これは京楽にとっても、決して軽い決断ではなかったはずだ。それでも、三界の存亡をかけた戦いに勝つためには、剣八の力の完全解放が必要だった。卯ノ花が命を落とす可能性を承知のうえで、この役目を託した京楽。そこには、個人の情よりも総隊長としての責務を優先する、冷徹なまでの現実主義が表れていた。
■かつての宿敵・藍染惣右介さえも利用する、京楽の合理主義
京楽が下したもう1つの重大な決断は、かつて尸魂界を裏切った藍染惣右介の力を利用したことである。
藍染は護廷十三隊を欺き、尸魂界を大きな混乱に陥れた大罪人だ。敗北後は地下監獄「無間」に収監され、厳重な封印が施されていた。本来であれば、二度とかかわるべきではない危険な相手だろう。
しかし、ユーハバッハとの戦いは、過去の因縁にこだわっていられるほど甘い状況ではなかった。コミックス第68巻、京楽は自身の心臓に無間の鍵を埋め込むことを条件に藍染との接触を試みる。そして、彼の協力を得るため、封印の一部を解くという大胆な判断を下したのである。
もちろん、藍染は素直に命令に従うような人物ではない。その規格外の力を利用することは、予測不能なリスクを抱え込むことでもあった。それでも京楽は、藍染を完全に信用するのではなく、その危険性を承知したうえで、あえて「戦力」として利用する道を選んだのである。
敵か味方かという単純な区別よりも、三界を守るという最優先の目的を貫く。おそらくこれは、規律や誇りを重んじる前任の山本元柳斎にはできなかった決断だろう。柔軟な発想で勝利への道を探る京楽の、指導者としての新たな一面が垣間見えた瞬間だった。


