アニメファンから “豊作”の呼び声が高かった2026年夏アニメ。新作から続編、往年の名作リバイバルなど70以上の作品が並び、話題性、クオリティ共に大きな反響を呼んだ今クールは、国内外でも大きな話題を呼びました。
今回は、そんな夏アニメラインナップの中から、「アナウンサーの皮をかぶったオタク」としても知られる田口尚平氏が、特に秀逸だった作品をピックアップ! 自身の目で観て選んだ「2026夏ベストアニメ」を、熱い想いとともに発表していきます。
現在フリーアナウンサーの田口氏は、ゲーム実況などで活躍する傍ら、毎クール放送されるアニメ作品をほぼ欠かさずチェックしているという生粋のアニメファン。そんな田口氏が“アニオタ目線”で選出した2026年夏のベストアニメは、はたしてどの作品なのか。
今回は【大関&横綱級】、ベスト1・2作品の発表です!
※本記事は各作品の内容を含みます。
【第2回/全2回】
■世界中で反響を呼んだ歴史系アニメ 第2位は『天幕のジャードゥーガル』
第2位は『天幕のジャードゥーガル』。原作は「このマンガがすごい!2023」オンナ編で第1位に輝いたトマトスープ先生のマンガ(秋田書店「Souffle」連載)で、13世紀のモンゴル帝国を舞台にした後宮譚です。
NHKの夕方帯で流れてそうな、可愛らしいルックで描かれたキャラクターたちが「あいつ絶対ぶっ◯す」みたいなテンションで躍動するお話。可愛くて可哀想で、国とか民族とか時代とか、そういうもののなかで翻弄されてしまう物語。めちゃくちゃ惹き込まれる作品だよ。みなさん教科書でご存知、チンギス・ハーンのあたりの時代。
主人公は、モンゴル帝国の捕虜となった元奴隷の少女・シタラ。彼女の武器は、美貌でも魔法でもなく「知識」。学者の家で育って身につけた知識だけを頼りに、後に皇帝となるオゴタイの第6夫人・ドレゲネと出会い、巨大な帝国を内側から揺るがしていきます。タイトルの「ジャードゥーガル」はペルシャ語で「魔女」の意味なんですが、剣も魔法も使わない少女が、知識ひとつで「魔女」と呼ばれる存在になっていく話だと思ってもらえれば。
制作は同じく夏アニメの『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』と同じくサイエンスSARUで、総監督は『けいおん!』などで知られる山田尚子さん、監督は『ダンダダン』のAbel Gongoraさん、キャラクターデザイン・作画チーフは『ガンダム Gのレコンギスタ』などの吉田健一さん、シリーズ構成は加藤還一さん、音楽は日野浩志郎さんという盤石すぎる体制。
実際、アヌシー国際アニメーション映画祭2026のコンペティションにも選出されていて、海外でも「映像美がすごい」と話題になっていました。色々な人にとってダークホースだろうなこの作品は。本当にさまざまな方がこの作品を評価しています。モンゴル版の大河ドラマアニメ。
特に私は去年モンゴルに行ったこともあって、かなり思いを馳せることができました。今でも馬に乗って、遊牧民として生きている人たちがいて、我々には馴染みのない文化の源流を垣間見ることができます。
ネットを見ていると、歴史クラスタや専門家が本気で語っていて面白い。歴史にも解釈があるからね。ドレゲネは実在のトレゲネ・ハトゥン、シタラが後に名乗る「ファーティマ」も歴史書に名前が残る実在の人物で、シタラに学ぶことの大切さを教えた少年・ムハンマドのモデルは、実在の大天文学者ナスィールッディーン・トゥースィーだと言われているらしく。イブン・スィーナーの「医学典範」みたいな固有名詞がさらっと出てくるたびに、イスラム科学史の研究者が「ここを描くか!」みたいに沸いていて、そこからwikiに誘導されてしまうというまでがセットね。
主人公のシタラは地頭もよく、知識もあるキャラクターだけど、完璧とはほど遠い。そこに物凄く惹かれ、感情移入ができるように緻密に描かれていると思いました。歴史モノとしても、女性たちの物語としても、アニメーションとしても今期屈指で、正直、第1位とどっちにするか最後まで迷いました。傑作です。


