■オール巨人の指導と若手の意地にハラハラ「ガチンコ・漫才道」
お笑いの世界の厳しさをお茶の間に伝えたのが、上方漫才界の重鎮・オール巨人さん(オール阪神・巨人)を講師に迎えた芸人養成企画「ガチンコ・漫才道」である。当時のお笑い界は、すでに厳しい修行を積むというイメージは失われつつあったが、礼儀やネタ作りの姿勢にまで厳しい目を向けた巨人さんの指導は、お笑い業界に一石を投じるものであった。
本企画に挑んだ塾生たちは、態度の悪いコンビや、巨人さんに敬意を欠いた口調で話す者など、一筋縄ではいかない若手ばかり。巨人さんは基本的に相手を諭すように言葉をかけていたが、あまりにも態度の悪い塾生には退室を命じることもあった。
ふだんから芸道に対して誰よりも真摯なことで知られる巨人さん。その厳しさの根底には、「エエ人に売れてほしい、残ってもらいたい」という強い信念があったという。だからこそ、礼儀作法はもちろん、漫才に取り組む姿勢にまで厳しい目を向けていたのだろう。
中でも語り草となっているのが、2000年の放送で、反抗的な態度を崩さない若手コンビに放った「お前、オレのこと知らんと思うけどな…」「弟子やったら、もうパンパンやな」という言葉だ。
この「パンパンやな」は、その後も巨人さんを象徴するフレーズとして、たびたびメディアで取り上げられている。実は「殴るぞ? バシバシ」と言うつもりが言葉を間違えてしまったと、のちに巨人さん本人が振り返っている。だが、その場の張り詰めた空気感も相まって、視聴者の記憶に強く残る名セリフとなった。
そして「漫才道」からは、のちのスターも誕生している。南海キャンディーズ結成前の山里亮太さんは、当時組んでいたコンビ「足軽エンペラー」として参加し、厳しい審査を勝ち抜いて見事優勝を果たした。
このエピソードは、日本テレビ系ドラマ『だが、情熱はある』でも描かれ、あらためて注目を集めた。巨人さんも自身の公式ブログで、「今は山ちゃん(山里君)が頑張ってるね」と綴っており、かつての教え子の活躍を純粋に喜ぶ様子がうかがえた。
師匠やコーチたちが本気で若者と向き合い、彼らの涙と汗にまみれながら体当たりでぶつかっていく。そんな『ガチンコ!』という番組は、多くの視聴者の心をつかんだ。
時には過激な演出が注目されることもあったが、その根底には指導する側のプロとしての厳しさと、人生を変えようと必死にもがく若者たちの純粋な姿があった。
あれだけ熱い企画だったからこそ、放送終了から20年以上が経った今でも、多くの人の記憶に残る伝説の番組となったのだろう。


