人気ブロガーのかんそうさんが毎週1回『ふたまん+』にてお送りする、ドラマへの熱い“感想”。今回取り上げるのは、日本テレビ系でスタートした秋ドラマ『俺たちの箱根駅伝』。池井戸潤原作で、駅伝中継の裏側とランナーたちの熱い闘いを描く作品です。大泉洋、伊藤沙莉、山下智久ら豪華キャスト陣が一気に出そろった第1回は、もどかしさのある内容だったようで……!?
池井戸潤原作の日テレ土9『俺たちの箱根駅伝』第1話を見終わった瞬間、頭の中がパンパンになりました。
駅伝描写は超リアルで、走り方から沿道の熱気まで「ちゃんと走ってる感」がちゃんとある。エキストラもとんでもなく多くて、競技場を埋める人の密度を見て「予算、大丈夫か? これ全部本物の人間か? CGで水増ししてないか? それとも日テレの社員全員動員してるか?」と心配になる。
中継車の中の画作りもカメラの切り替えも、金と労力をかけてるのが丸わかりで、ここまでは素直に「おお、やるじゃん。箱根を本気で中継してきた局が本気で作るとこうなるのか」ってなる。画面は明らかにリッチ。走るシーンも中継の裏側もちゃんと金をかけてる。
でもそのリッチさが、どこか「予算をかけて準備運動してる」みたいな印象に繋がってしまうのが不思議でならない。画面は豪華なのに、全体としてはこじんまりとして見える。ドラゴンボールで爆発する前のセル。
とにかく面白いのに登場人物が多すぎる。大泉洋がチーフプロデューサーの徳重で「選手が主役、自分たちは脇役」と信念を振りかざして、伊藤沙莉がセンターディレクターの宮本で熱を抑えながら現場を回して、山下智久が新監督の甲斐で画面にいるだけで空気が締まって、小林虎之介がエースの青葉で予選会で泣き崩れてと、ここまでで既に脳の座席が全部埋まって消化しきれてないうちから局長だのアナウンサーだのADだの技術スタッフだのマネージャーだの選手だのが次々追加投入されてくる。
特に初回は、駅伝の熱さそのものより、「選手のための中継」を成立させるための放送局ゴタゴタ話がメイン。徳重が「走る選手が主役で、自分たちは脇役に徹する」という信念を貫こうとして、上層部や芸能事務所側の都合とぶつかる部分が長めに展開される。
テレビ局を描きたいのか、駅伝という競技の熱さを描きたいのか、それとも両方やりたいのか。どっちもやろうとしてるのはわかるし、それがこの作品の売りなのも理解できるが、準備は完璧でも本番の熱がまだ来てない状態だった。
池井戸作品らしい組織と信念のぶつかり合いは嫌いじゃないけど、今のところは全てが中途半端で、これがTBS日曜劇場みたいにわかりやすく勧善懲悪で「ここが正義、ここが悪」と整理されてれば、「この人を応援すればいい」とすぐ感情が乗れるし、見どころも明確だけど、こっちは「振り切れてない」。
画面は明らかにリッチで、走るシーンも中継の裏側もちゃんと金をかけてるのに、全体としてはこじんまりとした印象を受けてしまう。豪華なキャストとリッチな画を活かしきれてなくて、「予算をかけて準備運動してる」みたいな感じがする。
大泉洋の徳重はイベントで「理想の上司ランキングに入ることを狙ってる」みたいなことを言ってたのがそのまま出てる感じで、悪い意味ではなく、本気で理想の上司をやってる。伊藤沙莉の宮本も熱量を抑え気味にしつつ現場のプロ感が出てるし、山下智久の甲斐もミステリアスな部分が多いけど画面にいるだけで「なんかやらかしそう感」が出る。クールに熱を押し殺してる感じがこれからどう選手と絡むのか楽しみではある。
キャスト演技自体はそれぞれ最高だが、全体として「この人たちを全部同時に見ろ」と要求されてるせいで、個々の熱が分散して薄まり、結果として「なんのドラマなんだ」みたいなモヤモヤが残ったのも事実。
今後、選手側の個々の物語が厚みを増して、テレビ局のゴタゴタと自然に絡み合っていけば化ける可能性はある。明誠学院の選手たちがただの「予選会で落ちた人たち」から、それぞれが何を背負って走るのかが見えてくれば、テレビ局側の「届けたい」という信念とも噛み合って凄いドラマになる気もしてくる。
画面は完成されてるのに中身がまだウォーミングアップしてる感じが、なんというか日テレドラマらしいと言えばらしいし、箱根の中継局が箱根のドラマを作ってるというメタ的な本気度は感じる。その本気度がまだ「本番の熱」に変換されきってないのがもどかしい。記憶の容量がパンクしたまま、次の話を待つしかない。
■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。


