2026年7月24日の公開から、59日間で興行収入158.4億円を突破した『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。
9月19日には入場者特典がリニューアル。第1弾の「チャームミニフィギュア」、第2弾の「ボンボンドロップシール」、第3弾の「プルバックカー『ごきげんセイレーン♪』」、第4弾の別種の「チャームミニフィギュア」に続いて、第5弾は「ひみつ本」が配布され、最新の流行から平成時代のアニメ映画の入場者特典を思わせる懐かしいものまで、様々な特典が話題を集めている。
『ちいかわ』の映画は、キャラクターたちのかわいらしい姿に反して、終盤の展開が「考えさせられる」と話題になっている。従来のファンはもちろん、これまで『ちいかわ』を見た事がない人も話題性の高さから劇場に足を運んでいる様子だ。そしてそれは、筆者の家族も例外ではなかった。今回はこの夏、筆者の家族の間で起こったちいかわに関する思い出を語りたい。
それは8月7日のこと。突然、地元の両親から「明日ちいかわ見てくるわ」とLINEがきた。映画を見ようと思ったきっかけは、8月8日から配布される入場特典の「ボンボンドロップシール」の情報を公式インスタグラムで見たからだそう。娘たち、つまり筆者と筆者の妹にそれぞれプレゼントしようと考え、ついでに、ここまで話題になっているならストーリーも気になる、と思ったかららしい。
ここで両親のステータスを紹介したい。父は70代後半、母は60代前半。2人とも普段アニメは全くと言っていいほど見ない。ミーハーな母はインスタグラムなどで情報収集することはあるものの、主な情報源となるのはもっぱらテレビだ。『ちいかわ』に関する知識は、30代の娘たちが好きで家族の間でたまに話題に上がるため、それぞれのキャラの名前くらいは知っている程度。父は以前、ハチワレを「カイワレ」と言っていて、一時期私と妹の笑いをかっさらっていた。
両親は地元のシネコンで20時30分から始まる回の映画を鑑賞したらしい。普段夫婦で映画を見に行く習慣もないため、自分たちのような世代の人間が果たして映画館にいるのか不安だったそうだ。
映画の詳しい内容は省略するが、99分の映画を最後まで鑑賞し、母はちいかわがお気に入りになったようだ。原作では自分1人ではどうすることもできずに泣いているだけのシーンも少なくないちいかわだが、映画では勇敢さを見せるシーンがたくさんある。映画でちいかわを好きになるのも無理はない。
ストーリーに分かりづらかったところはなく、ちゃんと感動もしたとのこと。普段アニメを見ない、なんならアニメというコンテンツ自体を子ども向けのものだと少し軽く見ている節もある両親が「大人が見ても面白かった」「深く考えさせられる物語だった」と語っていた。
今回の映画は、終盤のとある展開が、年代問わず一度は“正しさ”について考えさせられるような作品となっている。また作品自体の感想についても、「このシーンがかわいかった」「かわいそう」というキャラクター目線に立った素直な感想がある一方で、作中で描かれていること以上の深い考察をする人など、いろいろなタイプが存在し、楽しみ方も幅広い。
筆者は両親が『ちいかわ』を見たらどう感じるのかが気になり、あらかじめ、見終わったら感想を教えてほしいと頼んでいた。さすがに大人同士なので激しく考えをぶつけることはなかったが、両親もこれまで名前しか知らなかったそれぞれのキャラの解像度が上がって、さらに親しみがわいた様子だった。母に至っては、映画のエンディング曲「机さする」のアウトロの「ランランラララララララン♪」が耳から離れずつい口ずさんでしまうらしい。
さてそれからしばらく日が空き、先日、カレーハウスCoCo壱番屋と『ちいかわ』のコラボのカレーを食べた様子を家族LINEに上げたところ、その写真を見て、横浜に住む妹も地元に住む両親も同じ日に同じカレーを食べに行ったらしい。写真とともに「おまけで〇〇が出た」「4人で被らずにコンプだね!」という会話で盛り上がった。母が一連の流れの後に「なんか楽しいね」とLINEで言っていたのが印象的だった。
大人になると、親と同じものを見て、ちゃんと感想を語り合う機会はなかなかないように思う。両親が娘たちの好きな『ちいかわ』に興味を持ってくれたこと、そして同じものについて話す機会ができたことに、筆者は静かな喜びを感じた。また、離れていても同じ日に同じものを食べたということも、なんだか遠い昔に家族全員で食卓を囲んでいた時のような懐かしい気持ちがして嬉しかった。
地元を出て10年以上、会っていないのにここまで心が通ったと思ったイベントがあっただろうか。家族のLINEは今日も、ちいかわに関するグッズやキャンペーンの話題で盛り上がっている。


