■「わずかな情報から勝機を導く」分析の天才、アルミン・アルレルト
そして、ハンジの後を継いで第15代団長となったのがアルミン・アルレルトである。
身体能力では同期の兵士たちに及ばなかったアルミンだが、彼の観察眼と分析力は調査兵団の中でも群を抜いていた。女型の巨人の正体がアニ・レオンハートであることを見抜き、ライナー・ブラウンやベルトルト・フーバーの些細な挙動から彼らの正体を疑うなど、その鋭い洞察力は何度も仲間を窮地から救ってきた。
アルミンの凄さは、目の前にあるわずかな情報から「なぜ相手はそう動いたのか」を逆算し、隠された真実を導き出す点にある。
その彼の真骨頂が表れたのが、シガンシナ区での超大型巨人戦だ。
アルミンは、超大型巨人が熱風を放出する際、自身の肉体を消耗させていることと、肉以外の骨や歯にアンカーを突き刺せば、吹き飛ばされないことを見抜く。そして、その分析から自ら囮となる作戦を立案。熱風を受け続け、全身を焼かれながらもエレン・イェーガーが隙を突くための貴重な時間を稼いだのである。
その後、エルヴィンとハンジの遺志を継いで第15代団長となったアルミンは、かつての仲間であるエレンが引き起こした「地鳴らし」という未曾有の脅威に立ち向かうこととなる。
人類の存亡をかけた最終決戦においても、彼は決して諦めなかった。仲間たちとともに過酷な戦いを繰り広げ、自らの超大型巨人の力と持てる知略のすべてを出し、最終的に世界が滅びるギリギリの土壇場で踏みとどまらせることに成功したのである。
アルミンの知略は、単に敵を倒すためのものではない。絶望的な状況でもわずかな可能性を見つけ出し、それを勝機に変える「希望の知略」だったといえるだろう。
今回紹介した、歴代の調査兵団団長以外にも、『進撃の巨人』には多くの知略家が登場する。
エレンの巨人の力を人類の戦力として利用するトロスト区奪還作戦を立案したドット・ピクシス、自らの「安楽死計画」を実現するために長期にわたって策を巡らせたジーク・イェーガー、さらにフロック・フォルスターやイェレナも、それぞれの立場から執念深く知略を巡らせた人物である。
では、これほど複雑に絡み合う思惑と張り巡らされた伏線、そして彼らの繰り広げる劇的な頭脳戦をすべて描き出し、読者の予想を何度も裏切り続けてきた「真の知略家」は誰なのか。
そう考えると、この壮大な物語を創り出した諫山創氏こそが、最大の「知略家」なのかもしれない。


