エルヴィン? アルミン? それとも…『進撃の巨人』劇的な頭脳戦を披露した「作中屈指の知略家」を考えてみたの画像
劇場版『進撃の巨人」後編~自由の翼~』DVD (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

 諫山創氏による人気漫画『進撃の巨人』は、人間を捕食する巨人たちと、壁の中に追いやられた人類との戦いを描いた物語だ。

 この壮絶な戦いにおいて、勝敗を分けるのは兵士たちの高い戦闘能力だけではない。圧倒的な戦力差をくつがえし、幾度となく人類を死地から救い出したのは、兵士たちを指揮するリーダーが見せた「知略」であった。

 敵の正体を見抜き、相手の能力を分析し、かぎられた戦力から勝機を作り出す。ときには、仲間や自らの命さえも作戦の一部として利用することもあった。巨人が支配する過酷な世界であるからこそ、彼らは知恵を絞り、わずかな勝機をたぐり寄せてきたのだ。

 今回は『進撃の巨人』において、作中屈指の「知略家」は誰だったのかを考えていきたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■「すべてを駒にする」冷徹な知略家、エルヴィン・スミス

 作中屈指の知略家として、まず名前を挙げたいのが、第13代調査兵団団長のエルヴィン・スミスである。

 彼は長年にわたって調査兵団を率い、巨人の脅威にさらされる人類を救うため、数々の作戦を立案・実行してきた。冷静沈着な判断力と大胆な決断力を併せ持ち、兵士から厚い信頼を寄せられてきた。

 その知略が極限まで発揮されたのが、シガンシナ区決戦である。

 シガンシナ区の壁外で無垢の巨人に囲まれ、さらに獣の巨人から遠距離の投石を受けて、調査兵団は壊滅寸前に追い込まれていた。逃げ場すらない状況でエルヴィンが選んだのは、兵士たちを正面から突撃させるという、あまりにも残酷な作戦だった。

 狙いはただ一つ。兵士たちを囮にして獣の巨人の注意を引きつけ、その隙に接近したリヴァイ・アッカーマンがとどめを刺すというもの。

 だが、この作戦に参加させられたのは、壁外調査の経験がほとんどない新兵たちばかり。獣の巨人の投石の中を馬で駆け抜けるこの特攻は、生還の望みはほとんどない。ほぼ確実に命を落とすという非情な作戦だった。それでもエルヴィンは、罪悪感を吐露しながらも彼らを鼓舞し、勝利のために命を捧げる覚悟を求めたのである。

 そして、エルヴィン自身も先頭に立って死地へと向かう。部下に命がけの攻撃を強いて、その作戦成功のためには自身さえも「駒」として扱った。冷徹なる大局観と、人を惹きつけるカリスマ性を併せ持った彼だからこそ成し得た、悪魔的な策といえるだろう。

 「何かを変えることのできる人間がいるとすれば その人はきっと大事なものを捨てることができる人だ」という作中の言葉を、誰よりも体現していた人物であったように思う。

■「好奇心を武器に変える」巨人の研究者、ハンジ・ゾエ

 エルヴィンの後を継いで第14代団長となったハンジ・ゾエは、大局を見る知略家というよりは、科学的アプローチから人類を支えた知略家である。

 その原点ともいえるのが、捕獲した巨人ソニーとビーンの研究だ。兵士にとって巨人は恐ろしい敵だが、ハンジにとっては「知るべき対象」だった。なぜ動くのか、弱点はどこか、どのような性質を持っているのか……未知の巨人を調べ続け、その知識を人類の武器へと変えていったのである。

 その成果を象徴するのが、ハンジと技術班によって開発された新兵器「雷槍」だ。これは杭状の徹甲榴弾であり、目標に突き刺さった後、起爆用ワイヤーを引き抜くことで爆発する仕組みになっている。

 この新兵器によって、鎧の巨人の持つ硬質化能力さえも打ち破ることが可能になり、さらにそれまで巨人を倒す際に必須だった接近戦を避けることにもつながり、兵士の危険性を大幅に軽減させた。

 そして、その発想を突き詰めたのが、ギロチン型の大型罠「地獄の処刑人」だ。これも彼女が考案したもので、指定の位置へ誘導した無垢の巨人のうなじに、重りのついた巨大な丸太を落として叩き潰す仕組みになっている。

 兵士たちは巨人に直接接近する必要すらなく、安全かつ効率的に討伐できる画期的な発明だ。この装置は設置後も稼働し続け、わずか1年で島にいた巨人をほぼ駆逐。シガンシナ区への再入植を可能にする大きな原動力となったのである。

 ハンジの知略は、未知なる恐怖を客観的に観察し、それを技術と仕組みによって対処していくことで、効率よく人類の生存圏を広げていったのである。

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