■相手への敬意を忘れない
圧倒的な強さを持ちながら、礼儀正しさや周囲への配慮を忘れない点も、烈海王の魅力である。その姿勢は、烈がボクシングという未知の世界に飛び込んだ際のエピソードによく表れている。
次々とボクサーを撃破していく中、烈はボクシングを不完全な格闘技だと感じ始めてしまう。その驕りを感じ取ったコーチの深町元一は、「嘗めてるよボクシングを」と指摘。その直後、否定する烈に深町が放ったジャブを、避けられたにもかかわらず、烈はあえて顔面で受け止めた。それは、己の態度によって、ボクシングを愛する深町の心を傷つけた自身への戒めだった。
やがて、「スモーキン」ことジョー・クレーザーとの試合で窮地に陥った烈は、深町に素直に助言を求める。あまりにもハイレベルすぎるバトルゆえに、何を言うべきか分からない深町に、烈はどんな言葉でもいいと懇願した。そこで深町がしぼり出したのは「あるもの全てを使い切れ」というありきたりな言葉。だが烈は、それを大切な助言として受け止め、全力を出し切ることで師の恩に報いたのである。
自分の武に圧倒的な自信があったからこそ、かつての烈海王には傲慢な一面もあった。だが、多くの戦いを経ていく中でその欠点に自分で気づき、対戦相手への敬意を失わない人格者へと変貌していく。その彼の真摯な姿勢は読者の胸を打ち、真の強者としての品格を兼ね備えた存在として認知されていった。
■誰も予想できない行動に出る!
烈の魅力は、強さや面倒見の良さ、その崇高な精神性だけではない。時折見せる、思わずクスッとしてしまうような突拍子もない行動もその1つだ。
最初に読者を驚かせたのは、“水の上を走る”場面だろう。上で紹介した手負いのドイルを神心会本部まで運ぶ場面で、烈の行く手は小川にさえぎられる。すると烈は、これが最短ルートとばかりに水の上を疾走。ちなみに本人の言葉によれば、川幅15メートルまでなら水上を駆けるのは問題ないらしい。このまさかの光景を目の当たりにした人々も呆然とするしかない、人間とは思えない行動だった。
また、ピクルとの戦いで見せた「グルグルパンチ」のシーンも忘れがたい。自身の中国拳法がピクルにまったく通じないと悟り、絶望した瞬間、烈はとんでもない行動に出る。
感情の赴くまま、泣き叫びながら両腕をグルグル回してパンチを繰り出したのである。拳法の達人が突如見せた、子どものような予想外の行動は読者の度肝を抜き、今もなお語り継がれている。
ふだんは大真面目なキャラクターだからこそ、こうした予測不能な行動が際立ち、ギャップとして大きな魅力を生み出すのだろう。
登場を重ねるごとに「味」を増し、人間的魅力にあふれるキャラクターへと成長していった烈海王。スピンオフ作品で描かれる活躍も含め、そんな多様な魅力を持つ奥深い男だからこそ、多くのファンを惹きつけ続けるのではないだろうか。


