板垣恵介氏による『刃牙』シリーズには魅力的なキャラクターが数多く登場するが、中でも烈海王はかなりの愛されキャラだ。
中国武術界におけるトップクラスの称号「海王」を持つ烈は、最大トーナメント編で初登場して以来、最凶死刑囚編、中国大擂台賽編、野人戦争編、そして宮本武蔵編に至るまで、物語の中で独特の存在感を放ってきた。
さらに2020年には、原案:板垣恵介氏、原作:猪原賽氏、漫画:陸井栄史氏による『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』という、烈が主人公のスピンオフ作品も連載開始。本作は累計発行部数が200万部を超え、ついにアニメ化まで発表された。
そこで今回は、『刃牙』シリーズの脇役でありながらファンの心を惹きつけてやまない烈海王の魅力を、具体的なエピソードとともに紹介していきたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■いさぎよすぎる「一向にかまわんッッ」の精神
烈の名言といえば、やはりスピンオフ作品のタイトルにもなっている「一向にかまわんッッ」だろう。これは、いかなる状況下で戦いを挑まれようと、それを受け入れるという覚悟の表れでもある。
たとえ相手がどのような手段を使ってこようと卑怯とは見なさず、「負けたらそれまで」という潔さが感じられる。
この言葉が特に印象的に描かれたのが、最凶死刑囚の1人であるヘクター・ドイルとの戦いでのことだ。ある日の買い物帰り、烈はエレベーター内で敵対するドイルと偶然遭遇。「わたしはかまわん」と戦う気満々の烈に、ドイルが一緒に酒を飲まないかと声をかけ、移動した先のバーで戦闘が開始された。
戦いの前に烈は、ドイルが爆薬を使って鎬昂昇を倒した事実を指摘する。ドイルが平然と「卑怯だというつもりか」と問いかけると、烈海王は「わたしは一向にかまわんッッ」と返すのである。
その直後に戦闘が開始されると、烈は飛び道具を使った先制攻撃を仕掛け、武器と中国武術を駆使してドイルを追い詰めていく。ドイルも負けじと抵抗するが、本気を出した烈の怒涛の攻撃に手も足も出ず。烈は、圧倒的な力量差を見せつけて完勝するのだった。
烈は、常日頃から試合ではなく「死合い」を想定しての立ち居振る舞いをしている。それが、彼の「一向にかまわんッッ」という精神につながっているのだろう。
■無愛想に見えて心優しいツンデレファイター
初登場時、烈は寡黙で冷酷なファイターという印象が強かった。しかし、物語が進むにつれてそのイメージは大きく変化していく。
特に、上で紹介したドイルとの戦闘後の対応は、彼の新たな一面を浮き彫りにした。ドイルにとどめを刺す直前、烈は乱入したジャック・ハンマーによって気絶させられてしまう。するとドイルは、烈が倒れている間、彼を狙う存在と戦い続けて守り、結果的に立ったまま気を失うのだった。
目を覚ました後、自分がドイルに「警護」されたことを知った烈は、その恩義に報いるべく、瀕死の彼を救うために奮闘する。神心会本部まで彼をおぶって全速力で走り、医者に診せた後もそばで見守り、そのうえ自ら調理した料理を食べさせるのだ。その徹底した面倒見の良さで、多くの読者を驚かせた。
しかも、彼の手料理を本人は「ウマくはないぞ」と謙遜したが、実際はドイルが感動するほどしっかりおいしいというオマケつき。料理上手な一面まで披露したのである。
また、烈が心を許した範馬刃牙に対しても、彼はかなり献身的である。刃牙が柳龍光の「毒手」によって絶体絶命の危機に陥った際は、解毒のために大擂台賽へ出場させることを画策。同じく毒手の李海王とあえて戦わせることで、刃牙の体の毒を“裏返らせて”解毒することに成功した。
試合後の対応も完璧で、お腹を空かせた刃牙のために大量の中華料理を用意。これには刃牙も「アンタさ ほんっ…と優しいのな」と感心。そう言われた烈は、なんと顔を真っ赤にして照れ、「喰うんだ」とぶっきらぼうな返事でごまかしていた。
一見すると近寄りがたい存在だが、実はかなりの世話焼きである烈海王。照れ隠しするあたりも「ツンデレキャラ」の要素があって愛らしいのだ。


