■強者ほどハマる…平子真子の「逆撫」

 最後は、仮面の軍勢の一員にして、後に護廷十三隊・五番隊隊長を務めた平子真子の斬魄刀「逆撫(さかなで)」だ。解号は「倒れろ『逆撫』」。始解すると、柄の先にリングがつき、刀身に複数の穴が空いた独特の形状へと変化する。

 その能力は、刀から放たれる特殊な匂いを嗅いだ者の“認識を反転させる”というもの。上下、左右、前後、さらには斬られる方向まで、すべてを「逆さま」に認識してしまう。

 やっかいなのは、目で見た情報だけでなく、体に染みついた反射まで反転させられることだ。戦いに慣れた強者ほど、考えるよりも先に体が反応するため、その経験そのものが裏目に出てしまう。右へ避けようとすれば左へ、前から来た攻撃を避けようとすれば後ろへ体が動いてしまい、自ら攻撃に飛び込むかたちになってしまうのだ。

 この能力が初めて披露されたのは、コミックス第45巻、作中屈指の敵である藍染惣右介との対決であった。藍染は逆撫の支配下にありながらも、「馴れてしまえば何の事は無い」と豪語し、ほとんど影響を感じさせないほどあっさりと対応してみせた。

 ただし、このときの藍染が逆撫を完全に攻略したのかは定かではない。彼の斬魄刀「鏡花水月」は完全催眠の能力であり、この戦いで平子が見ていた藍染の姿そのものが偽りだった可能性もあるからだ。

 なお、卍解「逆様邪八宝塞(さかしまよこしまはっぽうふさがり)」は対象の“敵と味方の認識を逆転”させ、同士討ちを誘発させる多数の敵向けの能力だ。始解が研ぎ澄まされた感覚を逆手に取る「強敵向け」なのに対し、卍解は、いわば「雑兵向け」。役割がアベコベなところも、天邪鬼な平子の性格を体現しているかのようで面白いところだ。

 

 今回紹介した斬魄刀は、いずれも能力を事前に知らなければ、どれほどの実力者であっても対応が極めて難しい「初見殺し」の代表格といえるだろう。

 防御という基本行動を逆手に取る「侘助」、戦いのルールそのものを塗り替える「花天狂骨」、熟練者の戦闘感覚を無力化する「逆撫」。いずれも、相手の予想や常識の裏を突く能力である点が共通していた。

 強大な力同士がぶつかり合う『BLEACH』のバトルにおいて、単なるパワーやスピードだけではない、こういったトリッキーな能力の存在が戦いにさらなる緊張感を生み出す。

 何も知らずに対峙すれば、次の瞬間には勝負が決まってしまうかもしれない……そんな「初見殺し」の斬魄刀は、本作のバトルを魅力的なものにしている要素のひとつといえるだろう。

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