吾峠呼世晴氏による大人気漫画『鬼滅の刃』は、連載が終了した現在もなお世界中のファンを魅了し続けている。
鬼と戦う組織「鬼殺隊」に入隊するためには、藤襲山で行われる過酷な「最終選別」を突破しなければならない。そして合格者には、鬼と戦うための唯一の武器である日輪刀と隊服、そしてそれぞれに1羽ずつ伝令役の「鎹鴉(かすがいがらす)」が支給されるのだ。
ただの鳥ながら、人の言葉を理解し、巧みに話すこともできる鎹鴉たちだが、その存在は多くの謎に包まれている。今回はそんな鎹鴉の能力やキャラクター性、知られざる活躍について振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■本当に鴉? 伝令役として優秀すぎる能力
最終選別を突破した隊士たちに支給される鎹鴉。その多くは名前にあるように鴉(カラス)だが、中には我妻善逸につけられた鎹鴉「チュン太郎(本名:うこぎ)」のように雀(スズメ)も混じっており、一部例外も存在する様子。
主に伝令役を担う鎹鴉たちは、特殊な訓練によって人間の言葉を話すことができる。漫画では鴉たちのセリフはカタカナで表記され、アニメでも片言で話す場面が描かれた。しかし、鬼殺隊当主である産屋敷耀哉に仕える鎹鴉は、人間と同じように流暢に話し、他の鴉たちとは一線を画す存在であることが示されている。
そして、鎹鴉たちの役割は伝令だけにとどまらない。次の任務地への道案内も彼らの大切な役割だ。日頃から隊士を先導するだけでなく、日輪刀を製造する隠し里「刀鍛冶の里」への道案内も任されている。里の場所を巧妙に隠すため、鬼殺隊の後方支援部隊「隠」と同様にリレー形式で担当区間のみを道案内する役目ではあるが、極めて重要な役割といえるだろう。
さらに、鳥だけに飛行能力に長け、さまざまな包囲網を突破することができるのも大きなメリット。そのため、偵察役としても非常に優秀だった。
このように、特別な訓練によって多彩なスキルを身につけている鎹鴉は、もはや単なる鳥ではなく鬼殺隊にとって不可欠な一員なのである。
■隊士の個性に寄せている? 個性豊かな愛すべき鴉たち
各隊士に配属される鎹鴉は、実力のある強い剣士には飛行能力の高い鴉がつくなど、ある程度能力に応じた相性で決められている。それだけでなく、どことなく主人である隊士と似たような雰囲気を持つ鎹鴉が多く、そんな個性豊かな点もファンから愛される理由の1つだろう。
主人公・竈門炭治郎の鎹鴉「天王寺松右衛門」は、口調こそ厳しいが、情に厚い優秀な鴉だ。炭治郎のことを自身の弟子だと思っている松右衛門は、炭治郎に対して少々荒っぽい態度で接することもあるが、そんなざっくばらんなところも良き相棒であることを感じさせる。
一方で、雀である善逸の鎹鴉「チュン太郎」は、人間の言葉を話すことはできない。そのため、善逸と意思疎通を図ることは難しいが、彼を心配して援軍を呼んだり、不甲斐ない善逸を叱責したりと、まるで親のように気にかける姿が健気で愛らしい。
実際に「那田蜘蛛山編」では、兄蜘蛛と戦って毒に侵されていた善逸を救うため、チュン太郎が薬学に精通する蟲柱・胡蝶しのぶを呼びに行き、彼の命を救ったことがコミックスの幕間で明かされている。
そして、鬼殺隊の主戦力である「柱」の鎹鴉たちは、一般隊士の鴉と一味違う、より強烈な個性の持ち主が多い。
水柱・冨岡義勇の鎹鴉「寛三郎」は、高齢のために伝令を聞き間違えたり、危険な戦闘中に入ってきてしまったりと、何かと義勇をハラハラさせている。時には炭治郎のことを義勇と間違えるなど心配は尽きないが、一見クールでありながらどこか抜けているところがチャームポイントの義勇と、不思議と相性抜群に見える。
基本的に隊士と同性の鴉がつくことが多いが、霞柱・時透無一郎の鎹鴉「銀子」は雌である。銀子は長いまつ毛が特徴で、無一郎を「アノ子」と呼んで溺愛するあまり、彼以外の人間にはあたりが強いのが玉に瑕だ。
音柱・宇髄天元の鎹鴉「虹丸」は、主人と同じように派手好きで、宝石などで煌びやかに着飾っている。鴉たちの間の“ファッションリーダー”のような存在であり、天元と同じようにこめかみから宝石を垂らした姿は、まさに主人と一心同体に見える。
そして、「無限列車編」で命を落とした炎柱・煉獄杏寿郎の鎹鴉「要」は、杏寿郎の死を知らせるため即座に飛び立つ姿が描かれた。アニメ版ではその目に涙を浮かべており、いつ命を落としてもおかしくない隊士たちと鎹鴉の絆が、単なる主従関係ではないことを示す、切ない名シーンである。
ちなみに、嘴平伊之助の鎹鴉である「どんぐり丸」は非常に優秀な鴉だが、山育ちの野生児である伊之助には食料として認識されており、18回ほど食べられそうになった結果、ついには姿を隠してしまったという面白い逸話も残っている。


