■ナルトの誕生前から結婚まで見守った「一楽のおっちゃん」

 テウチがナルトをいかに長く見守ってきたかは、『NARUTO-ナルト- 疾風伝』の第34期エンディングでも描かれている。FLOWの手がけた楽曲『虹の空』が流れるなか、映像はテウチと「一楽」を中心に据えた特別なものとなっていた。

 この映像では、幼き日のナルトをはじめ、若かりしイルカやカカシなど、さまざまな時代の人物たちが「一楽」のカウンター越しにラーメンを食べる様子が描かれている。この店のラーメンがナルトだけでなく、木ノ葉隠れの忍たちにも長く親しまれてきたことが伝わってくる。

 なかでも特に印象的なのが、ナルトが生まれる前の時代の描写だ。若き日の四代目火影・波風ミナトと妻のうずまきクシナが仲睦まじくラーメンを食べるシーンが登場する。さらには、お腹にナルトを宿したクシナがつわりに苦しむ様子まで描かれており、ナルトと「一楽」の関係は、彼が生まれる前から両親を通じて始まっていたことが示唆されているのだ。

 そして時は流れ、原作漫画の最終回のその後を描いた公式小説『NARUTO-ナルト- 木ノ葉秘伝 祝言日和』では、ナルトと日向ヒナタの結婚祝いをめぐる物語が描かれるが、もちろんテウチも例外ではない。

 このエピソードはアニメ化もされており、第717話「木ノ葉秘伝 祝言日和『風影の御祝』」では、テウチがナルトへ贈る結婚祝いが描かれた。閉園後の店内で、テウチが用意したのは「祝 ナルト 食べ放題 いつまでも」と書かれた食べ放題の食事券だった。

 金がない少年時代に「出世払い」で温かい一杯を差し出し、やがて世界を救う英雄となった彼の人生の門出に「永久無料券」を贈る。少年時代からナルトを見守り続けたテウチらしい、なんとも粋な祝福だった。

 

 『NARUTO-ナルト-』の物語には、世界を救うために戦う強大な力を持つ忍が数多く登場する。そのなかでテウチは、忍術を使うわけでも、戦場でナルトを支えたわけでもない。ただ彼は、孤独だった少年にいつも変わらぬ笑顔でラーメンを差し出し、「一楽」という“温かな日常”を与え続けただけである。

 世界を救ったのが英雄・ナルトなら、その英雄の心を一杯のラーメンで支え続けたテウチも、世界を救った1人といえるのかもしれない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3