『NARUTO-ナルト-』(岸本斉史氏)の主人公・うずまきナルトには、彼を支えてきた人物が数多くいる。幼いナルトの心を救ったうみのイルカ、忍としての道を示したはたけカカシや自来也、そして苦楽をともにした仲間たち。彼らの存在なくして、ナルトが七代目火影まで上り詰めることはできなかっただろう。
しかし、ナルトを導いた師や、ともに戦った仲間たちとは少し違ったかたちで、彼の日常を支え続けた人物もいる。それが木ノ葉隠れの里のラーメン屋「一楽」の店主、通称「一楽のおっちゃん」ことテウチだ。
今回は、やがて英雄となるナルトを、一杯のラーメンで温かく支え続けたテウチの魅力を振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■孤独なナルトに寄り添った「一楽」の店主
体内に九尾を封印された「人柱力」であるという理由から、木ノ葉隠れの里の多くの大人たちから忌み嫌われていた幼少期のナルト。そんな孤独な彼を偏見なく受け入れ、1人の少年として接した数少ない大人の1人が、「一楽のおっちゃん」ことテウチである。
キャラクターオフィシャルデータBOOK『NARUTO-ナルト-[秘伝・臨の書]』(集英社)によれば、物語開始時点でテウチは43歳、ラーメン一筋30年の職人である。彼は、ナルトが「一楽」の暖簾をくぐれば、いつも変わらぬ態度で迎えてくれた。時にはサービスしてくれるなど、当時のナルトにとって貴重な“普通の大人”だったのである。
そこには九尾の人柱力だからという恐れも、かわいそうな孤児だからという同情もない。テウチにとってナルトは、ただラーメンが大好きな腹ペコの少年だったのだ。
そのことがよく分かるのが、アニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』のオリジナルエピソード、第396話「新米教師イルカ」。アカデミー時代のイルカの葛藤とナルトとの出会いが描かれたエピソードである。
作中、忍術の授業でうまくいかず落ち込んだナルトが「一楽」を訪れると、テウチは「ラーメン食ってくか?」と声をかける。ナルトが金がないと言えば、「出世払いでいいぞ」と、ラーメンを振る舞うのだった。
さらに、第440話「大ガマ仙人の予言」で描かれたシーンも印象深い。ペインの襲撃から里を救い、一躍人気者となったナルトが、人々に囲まれながらも足を運んだのが一楽だった。
イルカが教師としてナルトの存在そのものを認めた人物だとすれば、テウチは「一楽」という場所を通して、ナルトにごく普通の日常を与え続けた人物といえるだろう。
好きなラーメンを食べ、店主と他愛のない会話を交わす。幼い頃から英雄となった後まで、「一楽」に来れば変わらず迎えてくれる。そんな“当たり前の時間”が流れる、ナルトにとって大切な居場所だったのだろう。
■実は連載前から登場!『NARUTO』最古参のテウチ
そんな一楽の店主・テウチだが、実はキャラクターとしての歴史は極めて古い。『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まる前、1997年に『赤マルジャンプ』(集英社)に掲載された読切版『NARUTO』の時点で、彼はすでに「一楽のおっちゃん」として登場しているのだ。
読切版のナルトは、連載版とは設定が異なり“狐の妖怪の子”とされている。里の嫌われ者である点は同じだが、テウチはこの時から変わらない態度でラーメンを振る舞っていた。
しかも読切版では、テウチが“ある頼みごと”をしたことをきっかけに、ナルトが事件に巻き込まれていく。単なる脇役ではなく、物語を動かすキーパーソンとして描かれているのだ。
つまりテウチは、連載開始後に生まれた脇役ではない。物語の原点である読切版の段階から登場していたことを踏まえると、作者である岸本氏にとってテウチは、『NARUTO』の世界観を構築する上で、当初から欠かせない存在だったと考えられるだろう。
ちなみに「一楽」は、岸本氏が学生時代に実際に通っていた福岡県のラーメン店がモデルとなっているそうだ。


