守られるだけのヒロインじゃない『BLEACH』実は初期から規格外の存在だった「井上織姫」成長の軌跡の画像
DVD『BLEACH』[死神代行篇4](アニプレックス)©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ

 長きにわたって多くのファンを魅了してきた久保帯人氏による漫画『BLEACH』。その最終章である「千年血戦篇」のアニメもいよいよ佳境を迎え、物語は最後の戦いへとたどり着こうとしている。

 そんな今だからこそ、あらためて振り返りたいのが、ヒロイン・井上織姫の歩みだ。

 物語の序盤、彼女は主人公・黒崎一護に想いを寄せるクラスメイトとして登場した。ふだんは天然でどこかつかみどころのない性格だが、その心根は優しく、争いを好まない。そのため、物語では一護たちに助けられる場面が多く描かれ、「守られるだけの可憐なヒロイン」という印象を抱いた読者も少なくないだろう。

 しかし、織姫は決して「守られるだけ」の存在ではない。今回は、物語初期から発揮されていた織姫の強さと、その能力の特異性、そして彼女が「守られる側」から「一護を護って戦う存在」へと成長を遂げた軌跡を振り返りたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■兄の虚(ホロウ)化から始まった…初期から見せていた「折れない心」

 織姫の強さが最初に描かれたのは、コミックス第1巻に収録された兄・井上昊をめぐるエピソードである。

 幼い頃に両親を亡くした織姫にとって唯一の肉親であり、自分を育ててくれた兄はかけがえのない存在だった。しかし、その兄も交通事故で亡くなり、最悪なことに虚(ホロウ)となって織姫の前に現れるのである。

 凶暴化し、牙をむく兄の姿を前にしても、織姫は彼を「お兄ちゃん」と呼び続けた。そして、自分を育ててくれたことへの感謝と“大好き”という純粋な想いをまっすぐにぶつけ、自らの言葉で兄の正気を取り戻してみせたのである。

 そして、この事件が彼女の内に眠る力の覚醒へとつながっていく。親友の有沢竜貴がホロウに襲われた際、彼女を守ろうとした織姫は、自らの魂の力である「盾舜六花」を発現。そして、防御術「三天結盾(さんてんけつじゅん)」、治癒・回復術「双天帰盾(そうてんきじゅん)」、攻撃術「孤天斬盾(こてんざんじゅん)」という3つの能力を駆使し、危機を乗り越えたのである。

 さらに「尸魂界篇」では、処刑を言い渡された朽木ルキアを救うため、一護らとともに危険な尸魂界へと乗り込んでいる。

 織姫は、自ら前線に出て敵を倒すタイプではない。しかし、大切な人を守るためであれば、どんな恐怖にも立ち向かう。その意志の強さは、物語の初期からブレることなく描かれているのだ。

■藍染も目をつけた「事象の拒絶」…盾舜六花がチートすぎる理由

 そんな織姫の規格外な力に興味を抱いたのが、尸魂界の元五番隊隊長、藍染惣右介である。「破面篇」において、藍染は彼女の能力を“神の領域に侵入する能力”と評し、自らの目的のため、織姫を虚圏(ウェコムンド)へ連れ去った。

 なぜ藍染はそれほどまでに織姫の力を欲したのか。その異常性が際立っているのが、彼女の治療術「双天帰盾」である。

 作中には、卯ノ花烈が率いる四番隊のような治癒を専門とする部隊が存在する。彼らが用いる「回道」は、傷ついた肉体を治療する死神の治癒術だ。

 しかし、織姫の力はそれらとは根本的に次元が異なる。彼女の「双天帰盾」は、対象に起きた“事象そのものを拒絶”することで、起きた出来事を否定し、元の状態へ戻すという常識外れの能力なのである。実際、藍染自身もその力を「神の領域に侵入する能力」と評している。

 その驚異的な性能は、「破面篇」で存分に示された。藍染への反逆の証として東仙要に切断されたグリムジョーの左腕を完全に元通りに復元。さらに、そのグリムジョーによって上半身を吹き飛ばされ、即死したメノリまでも完全蘇生させてしまう。

 常軌を逸したその光景を目の当たりにしたロリ・アイヴァーンが「化物じゃない……!!」と恐怖したのも無理はない。

 こうした織姫の特異な能力の背景は、後の物語で少しずつ明らかになっていく。「盾舜六花」は、茶渡泰虎の能力と同じく「完現術(フルブリング)」と呼ばれるもので、その根源には霊王の欠片がかかわっていることも示されている。

 傷を治すだけにとどまらず、起きてしまった事象そのものを拒絶する。織姫の力が「反則技」と呼びたくなるほど異質なのも、こうした能力の性質を見れば納得できる。

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