■前世でも異世界でも恵まれない…『神無き世界のカミサマ活動』
次に紹介する『神無き世界のカミサマ活動』は、2019年から『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)にて連載が始まった原作・朱白あおい氏、作画・半月板損傷氏による漫画が原作のアニメだ。主人公は、謎の神「ミタマ」を崇拝する教団の教祖を父に持つ・卜部征人(うらべ・ゆきと)。
教団の跡継ぎとして、前世でむちゃな修行をさせられていた征人は、危険な儀式に無理やり参加させられて悲惨な最期を迎える。次に征人が目を覚ました時には、異世界の「カクリ」の村に転生していた。
魔法と剣の華やかな冒険者生活を期待して心躍らせるが、そこで待っていたのは農作業や家畜の世話だった。
それでも征人は、自由気ままに生きられる異世界生活を気に入り始めていたが、そんなときにあまりにも理不尽なルールが彼を襲う。この世界では一定の年齢に達すると皇国から自死を強制される「終生」と呼ばれる制度があり、征人が仲良くなった村人たちがその対象となったのだ。
征人がピンチのとき、謎の神「ミタマ」の力で仲間を救うことに成功するも、「カクリ」の村を守るために国家と戦うことになる。皇国に対抗する手段となるのが、信者が多ければ多いほど力を発揮できる「ミタマ」の能力だった。
そのため、かつて神を嫌っていた征人が皮肉にも宗教を興し、信者集めに奔走する「カミサマ活動」をすることに。前世の暮らしも理不尽なものだったが、人権無視の異世界に転生した征人の人生には、さらなる理不尽が襲いかかってくるのだから気の毒としかいいようがない。
■蜘蛛の魔物の成り上がりサバイバル『蜘蛛ですが、なにか?』
『蜘蛛ですが、なにか?』は、「小説家になろう」発の、馬場翁氏によるライトノベルをアニメ化した作品だ。主人公の「私」は、女子高生だったはずの記憶を持つ存在で、教室を襲った謎の爆発によって命を落とし、異世界へ転生することになる。
異世界に転生した彼女は人間ではなく、蜘蛛の魔物のなかでも底辺に属する種族「スモールレッサータラテクト」として生まれ変わるのだ。目が覚めたときには周りで蜘蛛同士の共食いが起こっており、彼女も巨大な親蜘蛛・マザーに食われそうになる。
しかも、その場所は凶悪な魔物の跋扈する「エルロー大迷宮」であり、転生直後から生きるか死ぬかの壮絶なサバイバルを余儀なくされるのだった。小さな蜘蛛にとって、食料も安全な寝床も保証されない、まさに地獄のような環境だ。
空腹を満たすためには自ら魔物を狩り、その肉を食べるしかない。しかし相手も命がけで襲いかかってくるため、知恵や罠、スキルを駆使して強敵を倒していくことになる。さらに過酷なのが、転生したばかりの「私」には頼れる仲間もいないのだ。
敵を倒してレベルアップや進化を繰り返しながら少しずつ強くなっていくものの、常に死と隣り合わせの孤独な戦いを強いられる。生存そのものが最初の目標となっている本作は、チート能力を得て悠々自適な異世界生活とは真逆の作品といえるだろう。
新天地での生活は「人生逆転」どころか、過酷な試練の始まりとして描かれる3作品。異世界モノのテンプレートとはかけ離れている一方、理不尽な環境下で、主人公たちが知恵や能力を駆使して生き抜こうとする展開は、従来の作品とは異なる面白さがある。
とはいえ、もし自分が別の世界で生きることになったとしても、この3作品で描かれる世界だけは遠慮したいところだ。


