■荒木飛呂彦『武装ポーカー』はデビュー作から心理戦がスゴい!

 最後は、荒木飛呂彦氏の『武装ポーカー』だ。1980年の第20回手塚賞で準入選を果たし、1981年1号の『週刊少年ジャンプ』に掲載された、荒木氏の記念すべきデビュー作である。

 タイトルの通り「ポーカー」を題材にした作品で、舞台は西部劇の世界。賞金首のガンマン、ドン・ペキンパーと、同じく賞金首のマイク・ハーパーが酒場で出会い、ポーカーで勝負することになる。単なるカードゲームだったはずの勝負は次第にエスカレートし、やがて互いの命までかけた極限の戦いへと変わっていく。

 漫画家としてキャリアをスタートさせたばかりの荒木氏は、「編集者に最後まで読ませたい」という思いで本作を完成させたという。100ページほど描いたものを31ページにまで練り直し、物語のエッセンスを凝縮。特に、物語の最後に待ち受けるどんでん返しは見ものである。

 考えてみれば、『ジョジョの奇妙な冒険』においても、第3部のダニエル・J・ダービー戦や、第4部の東方仗助と岸辺露伴によるチンチロリン対決など、ギャンブルを題材にした名勝負がたびたび描かれている。こうした直接的なギャンブルに加え、スタンド能力を駆使したバトルでも相手の裏をかく展開が多く、「心理戦」は荒木作品を貫く大きな魅力の1つである。

 そう考えると、その原点ともいえる『武装ポーカー』は、荒木作品のルーツを知るうえでも見逃せない一作といえるだろう。

 

 今回紹介した3作品は、いずれも尾田栄一郎氏、吾峠呼世晴氏、荒木飛呂彦氏の代表作とはまた違った魅力を持つ珠玉の読み切り作品だ。後の代表作に通じる作風のエッセンスが感じられる一方で、まだ人気作家として知られていなかった時期だからこその大胆な挑戦や、作家本来の個性も楽しめる。

 どれほどの大ヒット作家であっても、そこへたどり着くまでに描いてきた作品がある。代表作とは違った初期の読み切りを手に取り、作家のルーツや“らしさ”を探してみるのも面白い。

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