昨年公開された大ヒット映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』の劇場版2作目にあたる本作は、鬼舞辻無惨との直接対決となる「無限城編」を描いている。
その第一章では、上弦の弐・童磨と蟲柱・胡蝶しのぶの戦いが描かれた。決戦の前、しのぶは「柱稽古」には参加せず、姉の仇である童磨を倒すという悲願を胸に、毒の研究に身を捧げてきた。継子である栗花落カナヲに託した“鬼の殺し方”は、おそらく次の第二章で描かれるだろう。
今回は、毒を用いて鬼と戦う特異な剣士・しのぶに焦点を当て、彼女の研究の参考にもなったであろう、作中に登場したさまざまな毒を使う鬼たちについて振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■人間を蜘蛛にしてしまう毒! 下弦の伍・累の兄蜘蛛
シリーズ序盤の「那田蜘蛛山編」で登場した下弦の伍・累。作中で初めて対峙する「十二鬼月」であり、その圧倒的な強さに衝撃を受けた読者も少なくないだろう。
この戦いにおいて、毒を使う鬼として強烈なインパクトを残したのが、累の配下である兄蜘蛛だ。我妻善逸と戦った兄蜘蛛は、人間の顔に蜘蛛の体を持つ異形の鬼だった。鼻をつく異臭を放つこの鬼は、人間を蜘蛛に変えてしまう特殊な毒を使用する。兄蜘蛛が使役する小さな人面蜘蛛たちに刺されると、わずか“四半刻(現代の約30分)”で体が蜘蛛へと変貌してしまうのだ。
この毒に侵されると、まず手足にしびれと痛みが現れ、やがてめまいと吐き気に襲われる。そして激痛とともに体が縮み出し、あっという間に人面蜘蛛になってしまうのである。善逸は入山して間もなくこの蜘蛛に刺されており、毒の影響で髪の毛がごっそりと抜け落ちてしまった。
毒の恐怖によって善逸は失神するが、くしくもそれが引き金となり、彼の本領である「雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃 六連」が炸裂。勝負はあっけなく決着する。しかし、勝負がついても毒によって善逸は死を覚悟するしかなかった。
だが、そこに駆けつけたしのぶの的確な治療により、善逸は一命を取り留める。蜘蛛になってしまった他の隊士たちも、後遺症こそあれ無事に人間の姿へ戻ることができた。しかし、しのぶのような解毒に長けた者がいなければ、より多くの犠牲者が出ていただろう。
人間を蜘蛛に変えてしまう恐ろしい毒に加え、兄蜘蛛は口から「斑毒痰」という毒の粘液を吹き出す技も使う。これは触れたものを溶かしてしまうほどの強力な毒であり、これもまた非常にやっかいな技であった。
序盤に登場する「十二鬼月」ですらない兄蜘蛛だが、毒の危険性と鬼殺隊の隊士に及ぼした被害を考えると、相当危険な存在といえそうだ。
■柱を追い詰めた猛毒の血鎌! 上弦の陸・妓夫太郎
遊郭編に登場した「上弦の鬼」である妓夫太郎もまた、強力な毒の使い手だった。上弦の陸である妓夫太郎と堕姫は、遊郭を根城にする兄妹鬼である。
音柱・宇髄天元が、妹の堕姫の頸を斬り落とした際、泣き叫ぶ堕姫の体内から現れたのが妓夫太郎だ。その圧倒的な強さは、まさに上弦と呼ぶにふさわしいものだった。
妓夫太郎は、禍々しい見た目の「血鎌」を両手に持つ。そして、その血鎌から放たれる血の斬撃「飛び血鎌」は、猛毒を帯びていた。この斬撃の毒性は相当高いようで、感覚の鋭い嘴平伊之助は「掠っただけでも死ぬってのを肌でビンビン感じるぜ」と、その危険性を本能で感じ取っていた。
序盤でその斬撃を受けた天元が平然と戦い続けられたのは、彼が“忍”の家系であり、厳しい訓練によって毒への耐性をつけていたためである。しかし、その天元すら妓夫太郎の毒には抗えず、じわじわと体を侵され、苦戦を強いられることとなる。
さらに妓夫太郎は、無数に飛ばした斬撃を自在に操ることもできた。「飛び血鎌」は敵に命中するまで動き続けるため、ただ避けるだけでは回避できない。それに加えて、本来の戦闘能力もズバ抜けて高い妓夫太郎は、斬撃を後方に飛ばしつつ本体は血鎌で前方から猛攻するなど、合わせ技で天元を追い詰めた。
「遊郭編」の戦いは、天元をはじめ、炭治郎や善逸、伊之助が命がけで勝利をつかみ取った。もし禰󠄀豆子の血鬼術で妓夫太郎の毒を焼き尽くすことができなければ、天元は命を落としていたかもしれない。


