■ハリ1本でB・Jの不調まで治療した「座頭医師」琵琶丸

 『ブラック・ジャック』の登場人物の中で、特に異端の治療を行うキャラクターといえば、ボロボロの僧衣をまとった盲目のハリ師、琵琶丸である。

 「座頭医師」のエピソードで初登場した琵琶丸は、法外な治療費を請求するB・Jとは対極的に、無償で治療を施して去っていく。彼はB・Jが行う外科手術を「くだらない」と否定し、「動物は病気になったって手術なんかしない、みんな自分の力で治すのだ」という持論を展開した。

 そして琵琶丸は神業のごとき感覚で患者の病をかぎ分け、ハリ1本で2〜3千人もの患者を治してきたという驚異的な能力の持ち主だ。

 しかし、そんな彼にもミスはあった。作中、琵琶丸はハリに対して極度の恐怖心を抱く少年を治療しようとして、ショック状態に陥らせてしまうのである。

 その少年の命は、駆けつけたB・Jによって間一髪救われた。B・Jに“借り”ができた琵琶丸は、その後強引にB・Jを寝かせ、腸が丈夫になるようハリを一刺しして去っていくのである。

 琵琶丸の凄いところは、その神業的な治療法だけでなく、相手が抱える体の不調を即座に見分けられる点にある。B・Jに対しても、彼が過去に何度も腸を手術していることを見抜いてみせた。

 B・Jのメスを使った西洋医学に対し、琵琶丸が行うのはハリを使った東洋医学である。2人はライバルのような関係で互いの腕を認め合っており、その関係性も物語の見どころの1つとなっている。

 

 このように『ブラック・ジャック』には、現実では考えられないような特別な技術や能力を持った医師たちが登場する。しかし、彼らは単にB・Jの敵だったわけではない。常識外れの治療法でB・Jの考えや信念を揺さぶり、「正しい医療とは何か」「命を救うとはどういうことか」をあらためて考えさせてくれる存在なのである。彼らとの対峙を通して、B・J自身もまた医師として成長していく様子が見えるのも作品の魅力といえるだろう。

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