■3P重視の時代を予感!? 神宗一郎と三井寿の長距離砲

 現代NBAでは、ミドルレンジのシュートよりも得点効率の高い「3Pシュート」と「ゴール近辺でのシュート」を重視する傾向が強まっている。特に、ステフィン・カリーを中心としたゴールデンステイト・ウォリアーズの黄金時代以降、3Pによる大量得点は現代バスケットボールを象徴する戦術の1つとなった。

 『SLAM DUNK』の神奈川県予選では、海南の神宗一郎が1試合平均30.3得点を記録し、大会得点王に輝いた。彼の最大の武器は、高確率で決める3Pシュートである。

 インサイドに切れ込む牧が相手ディフェンスを引きつけ、外へ展開して神が仕留める「中から牧、外から神」は、現代NBAでも多用される「ドライブ&キックアウト」そのものだ。

 一方、湘北の三井寿も全国大会の山王戦で圧倒的な3Pシュート力を発揮した。作中で確認できるだけでもチーム最多となる25得点を記録。赤木のスクリーンプレーを活用してノーマークの状況を作り出し、疲労で体力が限界に近づく中でも長距離砲を沈め、湘北の山王撃破に大きく貢献した。

 効率よく得点を積み重ね、試合の流れを一変させる3Pシュートの価値は、30年以上前の『SLAM DUNK』において、すでに重要な要素として描かれていたのである。

 

 『SLAM DUNK』が連載終了から長い年月を経てもなお色あせない理由は、個性豊かなキャラクターの魅力や感動的なストーリー展開だけではない。バスケットボールそのものを深く理解した緻密な戦術描写もまた、作品の大きな魅力の1つなのである。

 もちろん、作者の井上氏が現在のNBAの状況を具体的に予見していたわけではないだろう。しかし、バスケットボールの普遍的な本質を捉え、それを作品に落とし込んでいたからこそ、『SLAM DUNK』は世代を超えて読み継がれ、現代の視点で読み返しても新たな発見を与えてくれる名作であり続けているのである。

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