怖かったけど救われた…90年代少女たちを震撼させた犬木加奈子の傑作ホラー漫画『不思議のたたりちゃん』の魅力の画像
『不思議のたたりちゃん』【極!単行本シリーズ】1巻(極!studio)

 子どもの頃に読んだホラー漫画で、いまだにトラウマとして忘れられない作品はないだろうか。平成の作品で、その代表格として名高いのが「ホラー漫画の女王」と称される犬木加奈子氏の作品『不思議のたたりちゃん』である。

 本作は、理不尽ないじめを受ける主人公・たたりちゃんが、加害者たちに恐ろしい復讐を遂げていく物語だ。しかし、その魅力は単なる恐怖や残酷な描写だけではない。今回は、大人になった今だからこそ見えてくる『不思議のたたりちゃん』の奥深い魅力を振り返っていきたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます。

 

■誰よりもピュアで友だち思い…! 不気味だけど愛おしい「たたりちゃん」の正体

 『不思議のたたりちゃん』は、犬木加奈子氏が1992年から少女漫画雑誌『少女フレンド』(講談社)で連載し、のちに実写映画化もされた伝説的な少女ホラー漫画だ。

 主人公・神野多々里(たたりちゃん)は、その不吉な名前と暗い容姿ゆえ、クラスメイトから日常的に酷いいじめを受けていた。しかし、たたりちゃんの本当の姿は誰よりも純粋で、心優しい少女である。同級生からどんなに意地悪をされても、彼女はいつも“友だちになりたい”と願い、クラスに溶け込もうと努力を続けるのだ。

 犬木氏の漫画は、キャラクターのギョロッとした目と、リアリティのある残酷描写が特徴的である。本作でもたたりちゃんをはじめとする登場人物はみんな目力が強く、大量の虫などが登場するグロテスクな恐怖シーンも多い。

 だが本作は、ふだんホラー漫画を読まない読者層にも支持されていた。その理由のひとつが、たたりちゃんというキャラクターの魅力だろう。たった1人でいじめに耐え抜きながら、どこまでも前向きに生きようとする姿は健気で、読者としては思わず応援したくなってしまう。

 不条理な現実に傷つきながらも懸命に立ち上がる彼女に、自分自身の姿を重ね合わせて見ていた読者も少なからずいただろう。作者の犬木氏はのちのインタビューで、連載を重ねるごとにファンレターが段ボールで届くほどに増えていき、自分の悩み事を打ち明ける少女たちからの手紙も多かった、と明かしている。

■トラウマ級に怖いけどスカッとする展開…いじめっ子を破滅に導く「たたり~」の呪い

 『不思議のたたりちゃん』には、おぞましい描写やトラウマになりそうな凄惨なエピソードが数多く存在する。しかし、そうしたホラー描写以上に怖かったのが、たたりちゃんを理不尽にいじめるクラスメイトたちの底知れぬ悪意だった。

 たとえば、たたりちゃんが虫の命を助けただけで「生意気だ」といじめられたり、自分より絵が上手いという些細な理由で嫉妬した同級生から酷いいじめを受けたりもする。中には生徒をこっそりいじめることで、自身のストレスを解消する美人教師まで登場し、たたりちゃんは仲間外れや暴力など、筆舌に尽くしがたい仕打ちを受けるのだ。

 よくもここまでひどい人間が集まるものだ……と読者の憤りが最高潮に達するところで、たたりちゃんの「たたり~」という叫びとともに呪いが発動。最終的にいじめっ子たちは、体が芋虫のようになったり、後頭部に口ができたりと、おぞましい化け物へと変貌する結末を迎えるのである。

 加害者たちに訪れた悲劇に、恐怖を感じながらもスッキリした読者は多かっただろう。連載当時はSNSも普及しておらず、学校での人間関係に悩み、気軽に愚痴をはける環境もなかった子どもたちにとって、たたりちゃんの復讐劇はある種の救いであり、ひそかな楽しみだったのかもしれない。

 その証拠に、電子書籍などの本作のレビューには「当時、たたりちゃんがそばにいてくれたらどんなに心強かったか」「自分もいじめられていたが、たたりちゃんを見て、頑張って学校に行っていた」といった、かつての読者からの熱いコメントが数多く寄せられているのである。

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