毎年8月3日は、闇(やみ=8・3)の語呂合わせにちなんで、「戦隊悪役の日(特撮悪役の日)」としてファンのあいだで親しまれている。
『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)から50年近く放送されてきた「スーパー戦隊シリーズ」は、2026年放送の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』を最後に休止期間に入った。
数々のヒーローの活躍を描いてきたスーパー戦隊シリーズだが、時に主役を食うほどの圧倒的な存在感を示した「悪役」もいた。単に世界征服を企む悪人という枠組みを超え、己の信念や独自の美学を貫いたことで視聴者を魅了したのである。
そこで今回は、昭和の戦隊シリーズを代表する、印象深い男性悪役にスポットを当てて、彼らが魅せた名場面について振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■女王に絶対的な忠誠を誓う、誇り高き武人の最期…ヘドラー将軍
『電子戦隊デンジマン』(1980年)といえば、曽我町子さんが演じたベーダー一族の指導者・ヘドリアン女王が有名だが、その彼女に絶対の忠誠を誓う「ヘドラー将軍」もまた、誇り高き悪役だった。
指揮官でありながら前線に出て戦うヘドラーは、大きな角がついた兜と骸骨をモチーフにした厳つい鎧を装着。立派な口ひげをたくわえ、「ワシ」という一人称を用いるなど、実に威風堂々とした武人そのもの。
冷酷な侵略者でありながら、一族に対する情は厚く、部下からの信頼も絶大。時折おちゃめな一面を見せながらも、全編を通して礼節は欠かさず、武人としての誇りを持って戦った人物である。
そんな彼の“美学”が最高潮に達したのが、あまりにも壮絶な最期のシーンだ。
物語後半から登場したバンリキ魔王は、ベーダー一族ではないが、デンジマンと敵対していたことからベーダー城に居候することに。だが第49話でバンリキが反旗を翻し、ベーダー一族は実権を奪われてしまう。
第50話「将軍は二度死す」の回でバンリキは、ヘドラーに無謀な特攻を命じる。ヘドリアン女王は死地に赴こうとする彼を引きとめようとするが、武人としての誇りを胸にデンジマンと刺し違える覚悟でヘドラーは出撃した。
しかし、その戦闘機はあえなくデンジレッドに撃墜され、ヘドラーは重傷を負う。そしてデンジレッドは、傷ついたヘドラーを戦闘機の爆発からかばった。そこにベーダー一族の戦闘員ダストラーが現れ、ヘドラーは何とか帰還する。
命からがらベーダー城へと戻ったヘドラーは再出撃を乞うが、バンリキから罵倒を浴びた挙げ句、足蹴にされる。その後、バンリキ魔王はバンリキモンスを従えて自ら出撃する。
バンリキ魔王とバンリキモンスは、圧倒的なパワーと強力な念力でデンジマンを追い詰めていく。その様子を城内で見守っていたヘドラーは、ヘドリアン女王に「ベーダーの剣を授けて下さい」と懇願する。
ベーダーの剣とは、使用者を怪物化させる呪いの宝剣。それは女王に対する絶対的な忠誠の証でもあった。デンジマンをベーダー一族以外の者が倒すのは、ヘドラーの武人としてのプライドが許せなかったのである。
覚悟を決めたヘドラーの申し出に、ヘドリアンは渋々承諾。ベーダーの剣を授けると「存分に戦うがよい」と言って送り出した。その時のヘドリアンの表情は実に切なかった。
デンジマンとバンリキの戦いに割って入ったヘドラーは、剣の力によって巨大化。巨大ロボ「ダイデンジン」との一騎打ちに臨む。ダイデンジンと互角の攻防を見せるが、最強の必殺技「電子満月斬り」を受けとめようとしたベーダーの剣もろとも両断されて爆散。
壮絶に散ったヘドラーに対し、電子戦隊も「ヘドラー将軍に敬礼!」と言って深い敬意を示した。このヘドラーの最期は、戦隊シリーズ史に残る印象的な散り様といえるだろう。
余談だが、『電子戦隊デンジマン』でヘドラー将軍を演じた香山浩介氏(現・藤堂新二氏)は、日本版『スパイダーマン』(1978年)で主演のスパイダーマン(山城拓也)役を演じた人物でもある。その過程で東映は、マーベル・コミックから期限つきのキャラクター使用権を得た。それによって生まれたのが、マーベルのキャラクター「死の女神ヘラ」をモデルとしたヘドリアン女王なのも、因縁を感じずにはいられない。


