物語に登場する悪役は、ときに主役以上に魅力的だ。主人公の前に立ちはだかり、恐怖や絶望を与えながらも、なぜか目を離せない……。その存在感ゆえに、作品を見終えたあとも強く記憶に残るのは、むしろ悪役のほうだったという経験を持つ人も少なくないだろう。
なかでも、漫画やアニメを原作とする作品に登場する「美しき悪女」たちは、実写化において特に難易度の高い存在だ。妖艶さと恐ろしさ、支配者の風格と人を惹きつけるカリスマ性。その独特なバランスを、生身の俳優が違和感なく成立させ、なおかつ原作ファンのイメージにも応えなければならないからである。
今回は、実写化作品で「美しすぎる悪女」を見事に演じ切り、その妖しさと説得力で観客を魅了した女優たちを振り返っていく。彼女たちはどのようにしてキャラクターの持つ毒気と色香をまとい、忘れがたい“ハマり役”となったのか。その鮮烈な悪女ぶりを、改めて見ていきたい。
(第1回/全5回)
※本記事には作品の内容を含みます
■美しき処刑人…『土竜の唄』胡蜂:菜々緒
高橋のぼるさんによる漫画『土竜の唄』は、潜入捜査官、通称「モグラ」として暴力団組織に潜り込んだ警察官・菊川玲二の活躍を描く人気作だ。三池崇史監督、宮藤官九郎さんの脚本によって映画化された実写版シリーズは、過激なギャグとバイオレンス、そして豪華キャストの競演で大きな話題を呼んだ。
その第2作『土竜の唄 香港狂騒曲』(2016年)で、主人公・玲二(生田斗真さん)の前に立ちはだかる最強クラスの刺客、胡蜂(フーフォン)を演じたのが菜々緒さんである。
胡蜂は、数寄矢会と敵対するチャイニーズマフィア「仙骨竜」に属する冷酷なヒットマン。その美貌を武器に標的へ接近し、容赦なく仕留める危険人物だ。そんな妖艶さと殺気をまとったキャラクターを、菜々緒さんは抜群のスタイルと身体表現によって鮮烈に実写化してみせた。
作中、胡蜂が初登場するのは、高級クラブのホステスに扮し、深いスリットの入った白ドレス姿で現れる場面だ。股下85cmとも称される長い脚を活かした立ち姿だけでも目を奪われるが、彼女の本領はそこからだ。
玲二との最初の本格対決となるトイレでの乱闘シーンでは、挑発的な仕草で一瞬の隙を誘った次の瞬間、鋭い蹴り技と俊敏な体術で襲いかかり圧倒。華やかなビジュアルと荒々しい戦闘スタイルのギャップが、鮮やかな印象を残した。
当時のインタビューでは、生田さんとの格闘シーンで「思い切りやっていい」と背中を押されたことを明かしており、ヒールを履いた状態での回し蹴りにも果敢に挑戦したという。単なる「美しい悪女」ではなく、実際に主人公を追い詰めるフィジカルを備えた強敵として成立していた点も、印象深い。
もっとも、『土竜の唄』らしい破天荒さも健在だ。死闘の末、胡蜂は玲二から“トイレのすっぽん”を顔面に押し当てられるという、美しき殺し屋らしからぬ屈辱を味わい、一時退散。しかし、この一件をきっかけに玲二への執着を強め、以降も執拗に彼を追い回すことになる。
その後も女性警官の制服姿やシースルーの黒ドレス姿など、多彩な衣装で登場しては激しい戦いを展開。極めつけには、なんと虎にまたがって姿を現すという、いかにも本シリーズらしい大胆な演出まで用意されており、観る者を驚かせた。
さらに菜々緒さんの胡蜂は、その5年後に公開された完結編『土竜の唄 FINAL』(2021年)にも再登場を果たしている。
ミニ丈のチャイニーズドレスに身を包み、電流が流れる鞭を武器として再び玲二たちの前に立ちはだかった。妖艶さと容赦のなさを兼ね備えたその存在感は、『土竜の唄』シリーズの破天荒な世界観にふさわしい、忘れがたい悪役だったと言えるだろう。
■菜々緒の抜群プロポーション…『土竜の唄』をPrime Videoでチェック



