人気漫画やアニメの実写化作品において、主人公の魅力と同等、あるいはそれ以上に作品の成否を分けるのが「悪役」の存在だ。圧倒的な強さや独自の信念を持ち、主人公の前に立ちはだかる姿は、時に主役を食うほどの強烈なインパクトを残すことがある。
とりわけ近年話題を集める大ヒット実写映画やドラマでは、ただ恐ろしいだけではなく、男性ながらどこか魅力のある“色気”のある悪役たちも登場している。
特に女性なら、そんな影のある男性キャラに惹かれてしまう人も少なくないのではないだろうか。正義の主役とはまた違う、悪役ならではの妖艶さに釘付けになってしまうのだ。そうした彼らの魅力は、演じる実力派俳優たちの役作りと、身を削るような熱演によって生み出されているのだろう。
そこで今回は「ふたまん+」の女性編集者たちが、漫画の実写化作品から、思わず息を呑むような「色気のある悪役男性」をピックアップ。その魅力に迫っていきたい。
(第7回/全8回)
※本記事には作品の内容を含みます
■血の付いたハンカチに恍惚の表情…『東京喰種 トーキョーグール【S】』月山習役:松田翔太
石田スイさんによる世界的人気コミックを実写映画化したシリーズの第2弾として、2019年に公開されたのが『東京喰種 トーキョーグール【S】』である。
不慮の事故により、人を喰らわないと生きていけない「喰種(グール)」と人間のハーフになってしまった主人公・金木研(カネキ/窪田正孝さん)。彼の前に立ちはだかる最大の宿敵として、圧倒的な存在感を放っていたのが、松田翔太さん演じる月山習(つきやましゅう)だ。
月山は、喰種の間でも“美食家(グルメ)”の異名で知られる特別な存在である。豪華な屋敷に住み、喰種専用の秘密のレストランに出入りしては、貴重な食材で作られた人肉料理を優雅に楽しんでいる。
そんな月山は、ある日「半喰種」という特異な匂いを放つカネキと出会い、すぐさま彼を“極上の食材”と認識し、異常な執着を見せ始める。
この特異なキャラクターを演じるにあたり、松田さんは「恋愛映画だと思ってやっていました。カネキ君を食べたいって、一目ぼれから愛に変わるような、そんな気持ちで演技していました」と、その驚きのアプローチを明かしている。
自らの役柄を”最高にド変態な月山”と称しながらも、決して下品にはならない松田さんならではの悪役像は、作品の大きな見どころとなっていた。
そして、彼の色気が最高潮に達するのが、ファンの間でも語り草になっている“ハンカチ”のシーンである。
読書中、ふとした拍子に指を切ってしまったカネキに対し、月山は紳士的にハンカチを差し出す。そしてカネキの血が染み込んだハンカチを回収するやいなや、そそくさとその場を離れてトイレの個室へ。そこで血のついたハンカチを顔に強く押し当てて激しく吸い込み、身悶えするように恍惚の表情を浮かべて崩れ落ちるのだ。
この一連の流れで見せた、ポーカーフェイスから一転して己の欲望を爆発させる松田さんの表情の演技は、まさに圧巻。薄気味悪い異常行動すら、彼が演じることで極上の色香を感じるシーンへと昇華されたのである。
また、本作のメガホンをとった川崎拓也監督と平牧和彦監督は、クライマックスの激しいバトルシーンを「月山がカネキに思いを伝える場」としてこだわって演出したという。
喰種特有の捕食器官「赫子(カグネ)」を用いた死闘の中、カネキは月山からの異様な“求愛”に戸惑い、身も心も追い詰められていく。しかし「血流が上がるほど、ますます香りが引き立つ」といった月山の詩的な表現も相まって、血生臭い戦闘シーンでありながら、どこかラブシーンを彷彿とさせる妖しい雰囲気が漂っていた。
単に猟奇的なだけのキャラではなく、独自の美学と愛情(食欲)を貫き通した月山習。“ド変態のカリスマ”という唯一無二の悪役を見事に演じきった松田さんに、思わず心を奪われた役柄である。
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