人気漫画やアニメの実写化作品において、主人公の魅力と同等、あるいはそれ以上に作品の成否を分けるのが「悪役」の存在だ。圧倒的な強さや独自の信念を持ち、主人公の前に立ちはだかる姿は、時に主役を食うほどの強烈なインパクトを残すことがある。
とりわけ近年話題を集める大ヒット実写映画やドラマでは、ただ恐ろしいだけではなく、男性ながらどこか魅力のある“色気”のある悪役たちも登場している。
特に女性なら、そんな影のある男性キャラに惹かれてしまう人も少なくないのではないだろうか。正義の主役とはまた違う、悪役ならではの妖艶さに釘付けになってしまうのだ。そうした彼らの魅力は、演じる実力派俳優たちの役作りと、身を削るような熱演によって生み出されているのだろう。
そこで今回は「ふたまん+」の女性編集者たちが、漫画の実写化作品から、思わず息を呑むような「色気のある悪役男性」をピックアップ。その魅力に迫っていきたい。
(第4回/全8回)
※本記事には作品の内容を含みます
■白塗りと赤いアイメイクの妖艶な姿で魅せた、美しき暗殺者『あずみ』最上美女丸役:オダギリジョー
2003年に公開された、小山ゆうさんの漫画が原作の大ヒット時代劇アクション映画『あずみ』。本作は過酷な使命を背負った少女・あずみ(上戸彩さん)ら暗殺者たちの壮絶な戦いを描いた実写映画である。
その中で圧倒的な存在感と異様な色気を放っていたのが、オダギリジョーさん演じる最強の敵・最上美女丸(もがみ びじょまる)だ。
真田幸村によって、あずみたちの前に送り込まれた冷酷無比な暗殺者・美女丸。その名の通り、女性と見紛うほどの美しい容姿を持ち、女性的な言葉遣いをする中性的なキャラクターだが、その内面は極めて残虐だ。
剣術の腕はずば抜けていて、“受け太刀不要”という理由から、あえて鍔(つば)のない刀を愛用。相手をじわじわと痛めつけながら命を奪うという、猟奇的な戦法を好む。
その難役をオダギリさんは、原作とは少し異なるアプローチで挑んだ。
原作の美女丸は長髪をポニーテールのように結び、薔薇が描かれた着物を着ている。対して実写版では、腰まで届くロングヘアをなびかせ、白塗りに赤いアイメイク、そして純白の衣装という、より中性的かつ妖艶なビジュアルで表現したのである。
一歩間違えれば奇抜なコスプレにもなりかねない姿だが、オダギリさんが身にまとうことで、危険な美しさを放つキャラクターとして完成する。さらに、女性的な立ち居振る舞いや、柔らかく響く低音ボイスのセリフ回しも自然で、ふとした瞬間にギラリと光る鋭い眼差しに色気を感じる。
美女丸の最大の魅力は、その“桁外れの美しさ“と“異常な猟奇性”のギャップにあるといえるだろう。
戦闘シーンでは、手足の長さを生かして舞うような華麗な殺陣を披露し、倒した相手を躊躇なく踏みつけて次なる殺戮へと向かう。まるで遊んでいるかのように余裕たっぷりに刀を振るうその姿からは、恐ろしさと同時に妖艶な雰囲気が漂っていた。
そして、あずみとのクライマックスのバトルでは息つく暇もない圧巻の殺陣が展開される。静かに闘志を燃やすあずみに対し、白い着物をなびかせ、ニヒルな笑みと相手をイラつかせる言葉で応じる美女丸。目を見開いて奇声をあげ、正気を失っているかのように見えるが、実は死闘を堪能しているようにも思えた。
見る者の心をざわつかせる“気味の悪さ”と“美しさ”を、見事なバランスで両立させたオダギリさん演じる美女丸。この役でオダギリさんは日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞し、その演技は高く評価された。これほどまでに妖しくも美しい悪役は、日本映画史においても稀有な存在といえるだろう。
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