人気漫画やアニメの実写化作品において、主人公の魅力と同等、あるいはそれ以上に作品の成否を分けるのが「悪役」の存在だ。圧倒的な強さや独自の信念を持ち、主人公の前に立ちはだかる姿は、時に主役を食うほどの強烈なインパクトを残すことがある。
とりわけ近年話題を集める大ヒット実写映画やドラマでは、ただ恐ろしいだけではなく、男性ながらどこか魅力のある“色気”のある悪役たちも登場している。
特に女性なら、そんな影のある男性キャラに惹かれてしまう人も少なくないのではないだろうか。正義の主役とはまた違う、悪役ならではの妖艶さに釘付けになってしまうのだ。そうした彼らの魅力は、演じる実力派俳優たちの役作りと、身を削るような熱演によって生み出されているのだろう。
そこで今回は「ふたまん+」の女性編集者たちが、漫画の実写化作品から、思わず息を呑むような「色気のある悪役男性」をピックアップ。その魅力に迫っていきたい。
(第1回/全8回)
※本記事には作品の内容を含みます
■全身包帯姿から出る異様なカリスマ性…『るろうに剣心』志々雄真実役:藤原竜也
2014年に公開された和月伸宏さん原作の大ヒット実写映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』。佐藤健さん演じる主人公・緋村剣心の最大の宿敵であり、原作でも圧倒的な人気を誇る志々雄真実(ししお まこと)を演じたのが藤原竜也さんである。
幕末に「影の人斬り役」として暗躍した志々雄は、同志たちに裏切られて全身を焼かれながらも奇跡的に一命を取り留めた人物であり、剣心の前に立ちはだかる史上最強の悪役だ。志々雄は体の発汗機能が壊れているため、戦いでは体内から異常な高熱を放つ。そうした特異な特徴から、実写化は困難とされてきたキャラクターである。
しかし、藤原さんは見事にこの難役に命を吹き込んだ。燃え盛る炎を背にした登場シーンから、場を支配する強烈な存在感を発揮。全身を包帯で覆われ、わずかに覗く目元と口元しか見えない状態でありながら、そこから放たれるギラギラとした鋭い眼光と艶のある声は、死の淵から蘇った男特有の危険な香りを漂わせていた。
この存在感を作り上げた背景には、想像を絶する過酷な撮影環境と、完成に至るまでの並々ならぬ道のりがあった。
志々雄のトレードマークである“全身包帯姿”のビジュアル作りは、困難を極めたという。当初は実際に包帯を巻いてみたものの見栄えが悪く、特注のスーツを制作することになったそうだ。しかしその形もなかなか決まらず、周囲のスタッフですら「本当に完成するのか?」と危ぶむほど、試行錯誤の連続だった。
そうしてようやく完成した全身スーツとヘッドマスクだったが、いざ着用してみると、その過酷さは想像を絶するものであった。
内部は暑く、耳は聞こえず、物も食べられない。さらに、トイレにすら行けない状態で早朝から深夜まで撮影に挑む日々は、筆舌に尽くしがたいものであっただろう。
しかし、藤原さんはこの不自由さをも役作りに昇華させた。“自分を陥れた者たちへの復讐の気持ちだけを持って挑んだ”と語るように、その極限状態こそが志々雄の持つ“生きることへの執念”や“底知れぬ怒り”と合致し、観る者を惹きつける悪の色気を生み出したのである。
全身包帯姿の志々雄は、一見すると藤原さんでなくとも、プロのアクション俳優などが演じれば成立するように思えるかもしれない。しかし、暗殺者として暗躍していた回想シーンで見せる鬼気迫る表情やスピーディな太刀筋は、藤原さんならではの演技力があってこそであった。
また、包帯姿になった後も、その重い声と太刀さばきで剣心を追い詰めていく様には、ゾッとするような妖艶さがあった。作品全体を通してみると、やはり志々雄真実という役は藤原さん以外に考えられないと心から思えるのだ。
最後は剣心との死闘の果てに「時代がお前を選んだだけだ」という魂の叫びとともに散った志々雄。過酷なスーツに身を包み、ただならぬ凄みと妖しい色気で悪のカリスマを体現した藤原さんの熱演は、日本の時代劇映画史において大きな足跡を残した。
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