『謎解き怪盗団シュロス』の著者・雨露山鳥さんは、謎解きクリエイターとしてRIDDLERに所属しながら、小説家としても活動している。読書嫌いだった少年が、パズル、ライトノベル、アニメといった作品との出合いを経て、なぜ現在の謎解きクリエイターの道にたどり着いたのか。雨露さんが考える、謎解きの面白さについても語ってもらった。
【第2回/全2回】
■本を読むのが嫌いだった小学生時代
――子どもの頃はどんな本や遊びが好きでしたか。
雨露山鳥さん(以下、雨露):小学校低学年のころは、本を読むのが本当に嫌いでした。父から「本も読まないとだめだよ」と言われて海外児童文学を渡されていたんですが、翻訳が古かったこともあり自分にはまったく合わなかった。嫌々読んでいた記憶があります。
ただ、小学5年生くらいのときに『フォーチュン・クエスト』という作品に出合い、そこから読書にハマりましたね。主人公の女の子が仲間たちと一緒に冒険するファンタジーで、そこから大人向けの本も図書館で借りて読むようになっていました。本が嫌いだったのに今こういう仕事をしているのは、その一冊の影響が大きいと思います。
――謎解きやパズルに興味を持ったのも、その頃ですか。
雨露:謎解きだけではなく、パズルやクイズなど、「考えること」自体は小さい頃から好きでしたね。テレビ番組の『IQサプリ』や、ゲームの『レイトン教授』シリーズもよく楽しんでいました。
また、小学4年生の頃からは『パズル通信ニコリ』をずっと買い続けています。過去のアーカイブも併せると、90冊近く買っています。
――書籍以外に、ご自身に影響を与えた作品はありますか。
雨露:『ラブライブ!』です。大学生の頃にはまった作品で、アイドルものではありますが、実際に描かれているのはスポ根に近い物語だと思っています。自分と年齢の近い子たちが前向きに頑張っている姿に、強く惹かれましたし、当時の自分にとってかなり大きな存在でした。ライブもたくさん行きましたね。
シリーズが増えているのですべてを追い切れていませんが、『ラブライブ!』を通じて知り合った友人たちとは、今でも一緒に旅行に行くことがありますし、自分の考え方も少し前向きになった気がします。
あとは長谷敏司さんの『BEATLESS』も好きです。アンドロイドと人間とのボーイ・ミーツ・ガールSF作品なのですが、いちばん面白い本は何ですか? と聞かれたら即答で『BEATLESS』と答えるくらい好きです。
■小説と謎解きに共通する「最後から作る」感覚
――小説家としての顔も持つ雨露さんですが、小説を書くことと謎を作ることには、共通点がありますか。
雨露:どちらも、最初に「やりたいこと」を決め、それを実現するために肉付けしていく点で共通していると思います。今回の『謎解き怪盗団シュロス』でも、終盤でやりたいことが最初にあり、それを成立させるために必要な条件や伏線を考えて、物語として一連の流れになるように組み立てていきました。
謎解きの世界では、面白い概念を実際に解ける形にする作業を「実装」と呼ぶことがあります。実装とは、頭の中にあるアイデアを、読者や参加者が本当に体験できる形へ落とし込むこと。今回も最初から細部が決まっていたわけではないですが、「これは面白い」と思える仕掛けがあり、それをどうすれば成立させられるのかを考え続けました。
――普段の謎解きを作るときに一番意識していることは何ですか?
雨露:サプライズを作ること。そのうえで、「これは絶対に面白い」と思ったらブレず、実現する方法だけを考えて、そこからさらに面白いと思ったものを超える何かを、もう一段考えるようにしています。最初のアイデアを捨てるのではなく、それも使いながら、さらに面白くできないかを探る。その感覚は、謎解きにもミステリーにも、小説にも通じていると思います。
――「謎解き」の面白さは、どこにあると考えていますか。
雨露:小説やアニメ、映像は、受け取っているだけでも物語が進んでいきます。でも謎解きは、自分で考えないと先に進めません。自分で考えるから、物語の中に入っていける。そこが、謎解きイベントやコンテンツの面白さだと思っています。謎解きは「ジャンル」というより「メディア」に近いと感じています。
――メディア、ですか。
雨露:ここで言うメディアは、物語を届ける形式という意味で解釈してもらうとわかりやすいかもしれません。物語を文章で表現すれば小説になる。映像で表現すればアニメや映画になる。そこに「考える要素」を加えて表現すると、謎解きになる。そういう感覚です。
――最後に、書籍を手に取った読者の方へメッセージをお願いします。
雨露:考えることは、実はすごく面白いことですし、謎解きを作ると、それを解いてくれた人の笑顔や、ひらめく瞬間を見ることもできます。だから、この本を読んだ子どもたちには、ぜひ自分でも謎を作って、友だちと一緒に解いてみてほしいですし、少しでも考えることが好きになってくれたらうれしいです。
<プロフィール>
雨露 山鳥(あまつゆ・やまどり)
謎解きクリエイター兼小説家。2018年、東京大学在学中に『夏空のプレアデス』(小学館)でデビュー。そのほかの著書に『目指せ!ナゾトレ甲子園』『謎解き インク・バトル・サバイバル』(扶桑社)など。現在はRIDDLER株式会社で謎解きクリエイター&YouTuberとして活躍中。2026年4月には『謎解き怪盗団シュロス』を上梓。
<作品紹介>
『謎解き怪盗団シュロス 1 秘密の怪盗デビュー!』
松丸亮吾率いる謎解きクリエイター集団RIDDLER発!「読む」「解く」「作る」で楽しむ、新感覚・謎解き児童書!
名探偵に憧れる少女・チナツの助手として行動していた少年・ハヤトは、ある日、学校を騒がせる怪盗団〈シュロス〉の一員になってしまう。チナツに秘密を隠したまま、ハヤトは「怪盗」として謎を作ることに――。物語の中には、読者も挑戦できる謎解きが9問収録。謎を「解く」楽しさだけでなく、「作る」発想法や考え方も学べます。全漢字ふりがな付きで、小学校低学年から親子でも楽しめる、「学校×怪盗×謎解き」シリーズ開幕!
▼特設サイト
https://fr.futabasha.co.jp/special/nazotokikaitoudan/
■謎解きクリエイター集団RIDDLER・雨露山鳥先生の最新作が好評発売中!



